巧言令色すくなし仁

 

スピーチがとても上手な人がいます。立て板に水を流すように理路整然と話をされます。
言葉に強弱を付け身振り手振りを交えてまるで舞台の役者のように語ります。

一度聞き惚れるとまたそのスピーチを聞きたくなります。
そして、その言葉に酔いしれるととても重要なメッセージだと錯覚をする事もあります。

誰もが理解可能なやさしい言葉の組み立てが上手なのです。
いま聞きたいこと、いま教えてほしいことの的を突いてくるのです。

話の合間に取り込むたとえ話が豊富で決してあきることがないのです。
そしてスピーチが上手人は見た目も楽しませてくれるのです。

そうなんです。スピーチが上手な人は五感に訴えて来る話し方をする人なのです。

古くはドイツのアドルフ・ヒットラーがそうです。
政治や力学を体系的に学ばなかったヒトラーを最終的に権力の座に就かせた最大の要因は演説であったと言います。

現在ヒトラーの演説と言えばおおげさな身振り手振りをし、
過激な言葉を怒鳴り散らすというイメージが強いのですが、
実は場合によっては演説の手法に手を加えることもあったようです。

例えば一般的に良く知られている激しい手法はどちらかといえば
教養の無い下層階級をターゲットとした演説であり、
知識人相手には穏やかに語りかける話術を使っていたといいます。

しかし、彼はホロコースト政策でユダヤ人を600万人以上も殺害しているのです。

中華人民共和国建国の父毛沢東も社会主義国家では誰もが「平等だ」と言い続けました。
「平等だ」を言った毛沢東こそ、権力の座を最大限に利用して「不平等」を押し通した張本人です。

毛沢東はいつも甲高い声で少しうわずったよう調子で激しく演説をするのですが、
湖南省地方の訛りがひどくて、聞いているほうは何を言っているのかわからなかったそうです。

周りは「毛主席は一体なんていっているのだろう」と思いながらも
万雷の拍手に飲まれて一緒に拍手をしていたといいます。

毛沢東が推進した急進的社会主義路線の完成をめざした「大躍進政策」は大失敗し、
発動されてから数年で2000万人から5000万人以上の餓死者をだしたのです。

これに文化大革命時の死者の数を合わせると未曾有の大量虐殺をした事になるのです。

ロシアのスターリンに関しては、個人的な一対一の話し合いも苦手で、演説するのも好まなかったそうです。
演説は素直で分かりやすかったが、思考の飛躍、警句、迫力に欠けていたといいます。

グルジア訛りが強く、覚えたロシア語もぎこちなく、単調であったため、表現力に乏しかったといわれます。
スターリンは指示や指令を出し、論文や記事を書き、新聞に論評するほうを好んだといいます。

彼は「貧民階級の味方」という聴衆の訴えによって人気を得ました。

そのスターリンの愚策によって大飢饉がおこりウクライナ地方と合わせると600万以上の人が亡くなったのです。

ソ連のスターリン、ドイツのヒットラー、中国の毛沢東、「世界三大大量殺戮者」として、共に揶揄されることとなった。

巧みな言葉を使い人を欺く事を「巧言令色すくなし仁」といいます。
その言葉に騙された結果が大量虐殺に繋がったのです。恐ろしい事です。

新しいところではアメリカのバラクオバマ大統領がそうです。

ときには宣教師のようであり、救世主のようであり、預言者のようでもあるのです。
演説の巧さと人を惹きつける魅力はカリスマ的であり、演説を続けるごとに支持者を獲得したのです。

政策は具体性に欠け抽象的・理念的な話が多いという評価がある一方、
演説の説得力はジョン・F・ケネディーの再来とも形容されるそうです。

アメリカは各国に武器を売り、至る所で戦争を仕掛けています。
オバマ大統領が原因ではないのですが、中東各地での死者は数百万人になっているとおもわれます。

今後アメリカの軍事政策、経済政策が間違えれば、自国での死者も大量に増やすことになると思われます。

多くの民衆は世相が悪化している時に強いリーダーの出現を望みます。
しかし歴史上をみればわかるように、強いリーダーの演説を信じて被害を受けるのは弱い民衆なのです。

ここからが大切な所です。「あなた達の為に」を連呼する人は要注意なのです。

「必ず」とか「絶対に」の言葉も注意しなければなりません。
興奮して一方的にまくしたてる話し方をする人には、危険信号を灯さなければなりません。

昔から口先が巧みで、角のない表情をするものに、誠実な人間はほとんどいないと言われています。

すなわち話上手な人は自分の理論に酔いしれているだけの人が多いのです。