友情とは




「友」とは語源からお話しましょう。
人間関係の基礎となる「友」という言葉。この漢字一文字には深い意味が
込められており、日本の文化や社会において重要な役割を果たしています。
常用漢字「友」の起源から現代における使われ方までを深掘りし、
その魅力を探ります。

漢字「友」は、古代中国にその起源を持ちます。「右手」と「又」(または)の
組み合わせで、「手を携(たずさ)える」という意味があり、
互いに支え合う関係性を象徴しています。
この漢字は、信頼と協力の精神を表しており、古来より
人々の間の絆を意味する重要な文字として使用されてきました。

「友」という漢字は、「友人」や「友達」として、親しい人との関係を示す
言葉として用いられます。また、「友好」や「友愛」といった言葉にも
見られるように、国家や集団間の良好な関係を指す場合にも使用されます。
心を寄せ合う、信頼し合う、共に時を過ごすといった意味合いを持ち、
日本語における人間関係を表す上で欠かせない漢字です。

小説における「友情」を描いた作品をいくつか紹介します。
太宰治(だざいおさむ)
冒頭の「メロスは激怒した」のフレーズが有名な『走れメロス』は、
太宰治の代表作の一つであり、国語の教科書にも収録されました。
『走れメロス』は、人間の根底にある心理を巧みに描きながら、
信頼とは何かを問う物語です。まずは、あらすじを簡単に解説していきます。

妹の結婚準備のためシラクスの市を訪れたメロスは、人づてに聞いた国王による
残虐な行いに激怒し、城へ乗り込みます。
王に歯向かった罪で、メロスは処刑されることになります。
メロスは処刑を受け入れるものの、妹の結婚式のため3日間の猶予がほしいと述べ、
親友のセリヌンティウスを人質にすることを提案し、認められます。

そして無事に妹の結婚式を見届けたメロスは、親友の待つ城へ向かって走りだします。
肉体的疲労や自身との葛藤、度重なる障害を乗り越えて約束を守ったメロスの姿に、
王は改心します。親友の為に命を投げ出すセリヌンティウスに頭が下がります。

処刑場でセリヌンティウスの縄がほどかれた後、メロスは途中で約束を
諦めそうになったことをセリヌンティウスに伝え、自分を殴ってほしいと頼みます。
うなずき、友の頰を力いっぱい殴ったセリヌンティウスも、メロスを一度
疑ったと告白し、同じく自分を殴ってほしいと彼に頼みます。

お互いを殴り合った後に「ありがとう、友よ」と言って抱きしめ合う
2人の姿を見たディオニスは改心し、自分も仲間に入れてくれるよう
お願いしました。
そしてそれを聞いた群衆は、「王様万歳」と歓声を上げたのでした。

陳寿(ちんじゅ)
桃園の誓い(とうえんのちかい)は、桃園結義(とうえんけつぎ)とも称され、
『三国志演義』などの序盤に登場する劉備・関羽・張飛の3人が、
宴会にて義兄弟(長兄・劉備、次兄・関羽、弟・張飛)となる誓いを結び、
生死を共にする宣言を行ったという逸話のことである。

これは正史の『三国志』にない逸話であって創作上の話であるとされており、
劉備が2人に兄弟のような恩愛をかけ、関羽・張飛は常に劉備の左右に侍して護り、
蜀漢建国に際して大いに功績があった、という史実に基づいて作られた逸話である。

我ら三人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、
心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。上は国家に報い、
下は民を安んずることを誓う。同年同月同日に生まれることを得ずとも、
同年同月同日に死せん事を願わん。皇天后土よ、実にこの心を鑑みよ。

シェイクスピア
『ヴェローナのニ紳士』はイギリスの代表的な劇作家シェイクスピアの作品。
16世紀末に制作された。ヴェローナの二人の紳士は親友だ。
一人がミラノへ旅立つ。もう一人は恋人のためにヴェローナに留まろうとするが、
まもなくミラノへ旅立つ。
二人の紳士はミラノ公爵の娘に恋する。すでに恋人のいる紳士は、彼女への愛と、
親友への友情を犠牲にして、公爵の娘にのめり込んでいく。
その果てに待つものとは・・・。

プロテウスの父は、プロテウスの将来を案じている。
(この時代、旅には人を成長させる教育の役割があると考えられていた。
10代の若い貴族が特に教育の重要な段階として旅にでた)。
プロテウスの父はプロテウスを旅にいかせて、成長させるべきだと考えた。
 
そこで、プロテウスの父はプロテウスをミラノへ旅させることに決めた。
プロテウスはジュリアへの未練があったが、しぶしぶ旅立つことに同意する。
ジュリアとは、変わらぬ愛のしるしとして、指輪を交換する。
(長文のために一部割愛した)
プロテウスは男装したジュリアと会う。「彼」がジュリアだと気づかない。
シルヴィアに贈り物を渡してほしいといって、変装したジュリアに指輪を渡す。
それは、かつてプロテウスがジュリアと愛を誓いあった時に交換した指輪だった。
ジュリアは深く傷つき、そのまま言う通りにしようとして、これを引き受ける。
だが、それでもプロテウスを諦められなかった。
ジュリアは言う通りに指輪をシルヴィアのもとにもっていく。
 
だが、ジュリアはシルヴィアにこの贈り物を断るよう仕向ける。
正体を明かさないまま、これがプロテウスへのジュリアという女性のプレゼント
したものだったことを知らせる。シルヴィアはそれを聞いて、指輪の受け取りを
拒否する。
 
シルヴィアは友人とともに、マントヴァへの移動を開始する。
だが、森を通っている時に、上述の無法者の集団に捕まる。友人は逃げてしまう。
公爵はシルヴィアがいなくなったのに気づき、捜索隊を組織する。
プロテウスとトゥリオ、変装したジュリアがこれに参加する。

そこに、公爵やトゥリオたちがやってくる。トゥリオはシルヴィアを
自分のものだというが、ヴァレンタインの威勢に怖気づく。
公爵はヴァレンタインに頼もしさを感じて、シルヴィアとの結婚を許可する。
ヴァレンタインとシルヴィア、プロテウスとジュリアの結婚式が行われることになる。

友情にまつわる話は古今東西山ほどあります。
思春期から青年期には
同性の友と夢を語り合い、
異性の友には人生を語ります。

手紙しかなかった時代に想いを伝える時に重宝だったのが「詩集」でした。
最近ではどこの本屋でも見かけることがありません。
ゲーテやハイネ・牧水を愛読していた私にとっては寂しい限りです。
音楽が一般に普及していなかったころは「歌声喫茶」へ出向く人と
怪しげな「ジャズ喫茶」へ出向く人と二派にわかれていました。

私は後者で友と連れ立って初めて聞くジャズの魅力に取りつかれました。
飲めないウイスキーと苦手な煙草をくゆらせて
訳の分からないデカルト・ショウペンハウアーを読み、大声上げて学生街を
「デカンショウ、デカンショウで半年暮らせ、あとの半年は寝て暮らせ」と
肩を組みながら練り歩いたものです。