羞恥心の始まりが人間の始まり




動物には恥ずかしいという感情は無い。
我々人間に羞恥心が芽生えたのはいつ頃のことでしょうか?
旧約聖書の冒頭にある「創世記」に最初の人類としてアダムとイブが紹介された。
そのアダムとイブがエデンでリンゴを齧らなければ羞恥心は起こら無かった。
そのときに人間は二人しかいなかったのに裸が恥ずかしいという
意識が芽生えたのである。

近年、駅や車内などで地べたに座り込む「ジベタリアン」、
所構わず濃厚なラブシーンを演じる「人前キス」、
電車の中で平気で化粧をする「車内化粧」など、
街中での“迷惑行動”が目につくようになった。
羞恥心のない彼らは人間を放棄しているのである。

かつて、アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトは
著書「菊と刀」の中で日本を「恥の文化」であると規定した。
しかし、今、日本でこの図式は成り立つのだろうか。
普段、私たちは「恥ずかしい」という感情を毎日のように体験するが、
羞恥心の性質についてはあまり知られていない。

人間はなぜ「恥じらう」のだろうか。
「羞恥心」は何の役に立っているのだろうか。
そして現代社会で何が起こっているのだろう。
「恥」から見えてきたニッポンの今とは。

「他人の目が気になる」から「ジブン本位」「ミニセケン」へ
「電車の中で化粧をするのは恥ずかしくない?」
「恥ずかしくない」
「彼氏の前でも化粧をするの?」「それはありえない」

恥じらい、あるいは羞恥心というのは、
恥ずかしいと感じる気持ちのことである。
つまり恥を感じている気持ちのことである。

日本の心理学者である菅原健介は、羞恥心が生じる重要な要因として、
他者から期待される役割やイメージからの逸脱を挙げている。
人間には所属欲求があり、所属した社会から排斥されないために、
公的な自己像からの逸脱をコントロールしようとする。

羞恥心は、他者からの期待や信頼に背くなど、社会からの排斥を
想像させる苦境場面に自己が置かれていると認識することによって
喚起される、生得的な警告反応である。
この期待と現実のギャップによって起きる反応は、
他者からの期待が現実を大きく超えた賞賛などでも生じる。

罪悪感ないし羞恥心を測定する「TOSCA-A」の項目 “shame” によると、
羞恥心は以下のとおり4つの下位尺度に分類される。

1)自己の存在が取るに足らない物と感じ、自己を否定したいと思う
「全体的自己非難」
2)恥を感じる状況から逃げたい、もしくは恥を感じた記憶を消したいと思う
「回避・隠蔽反応」
3)自分が周囲から孤立したと感じる
「孤立感」
4)人に見られている、人に笑われていると思う
「被笑感」

自己意識的で否定的色彩があることなど共通する要素が多く、
社会的行動に影響を与える感情として、羞恥心はしばしば罪悪感と比較される。
罪悪感が自己の起こした特定の行動の相対的評価を問題視するのに対し、
羞恥心は自己全体への否定的評価を問題視する。

羞恥心を感じやすい人は、罪悪感を持ちやすい人より攻撃的で、
責任を転嫁しやすい傾向があるという。
羞恥心は、外部への帰属、他者への強い焦点、復讐といった感情や行動を
発生させる屈辱感を伴い易いからである。

「羞恥心はどこへ消えた」菅原健介
序章 ジベタリアン現象
蔓延しつつある迷惑行動

「日本人の美徳」が崩れ始めた?/見過ごせない事態/ジベタリアン、
人前キス、車内化粧……/「別に構わないんじゃない」/仮説/
意外な結果/若者たちのこだわり/二つの志向/若者だけの問題か

第一章 恥にまみれた人生
日常生活は常に「警告」されている
「警告」される理由/「恥ずかしい体験例」を集めてみたが…
恥にまみれた人生/“落とし穴”が待っている
/ビデオ店での客の不審な行動/客たちの作戦/四つのツボ/
褒められても恥ずかしいのはなぜ?/「妬み」の心理
/他人の期待を裏切るということ/自分の「鼻」が高くなりすぎないように
/見ているだけで恥ずかしいのはなぜ?/「同類だと思われたら困る」
/見るなの禁/他人のプライバシーと羞恥心/性的視線の禁
/恥の壁/「シャイネス」のリスク/長所と短所/周囲の声を恐れすぎて
/絶大な影響力

第二章 生きていくために必要なもの
人類の歴史的産物

なぜ他者の機嫌をとらなければならないのか/サバイバルに有利に働く能力
/個人が排斥される三つの要因/人類が生き延びるための道具
/自分を知っているということ/ゴリラは自分を知らない
/いつから「自分を知る」ようになるのか/人類共通の表情
/「あらゆる表情の中で最も人間的なもの」/二つのメッセージ
/「ハジ」と「テレ」/誰にも教わっていないのに

第三章 もし誰かに裸を見られたら
恥の基準と多様性

坊っちゃんと天麩羅/女子大生たちのイメージギャップ
/年を取れば羞恥心は消える?/性への恥じらい/年齢と羞恥心
/電車内で「おなら」をしてしまったら/裸を誰かに見られたとき
/日本=恥の文化?/ある国際比較調査/等質的社会の崩壊

第四章 玄関を出ればタニンの世界
ジベタリアン的心性の拡大

誰の目が気になるのか/ほどほどに関係が重要な相手
/「ミウチ」「タニン」「セケン」/現代日本社会に残る規範
/“フツウ”はどこにある?/お金とタニン/地域社会のタニン化
/地域的セケンの基準/「ジブン本位の基準」の台頭/「せまいセケン」の乱立
/ルーズソックスをはかないこと/“二つの常識”の板ばさみ/心の背景
/ジベタリアン現象とは/タニンの空間で勝つ者/ジベタリアン的心性の拡大

如何でしょうか?
項目に興味のある方は書籍を購入して読んでみては如何でしょうか?