ヨナ抜きとニロ抜き




皆様はご存知ですか?ヨナ抜きとニロ抜きという音階を?
制作者が多くの楽曲を作曲家へ依頼する時に楽曲のイメージを伝えます。

イギリスのマージービート風、フランスのシャンソン風、イタリヤのカンツォーネ風、北欧の民謡風、

アメリカのゴスペル風などと具体的に曲調を依頼します。

そこで登場するのがキーとなる音階なのです。
これはターゲットを意識して新曲を作る場合に適応されます。
どちらかというとロック系、フォーク系、アイドル系、歌謡曲系向きです。

勿論、シンガーソングライター系のアーティストには具体的に伝えません。
アレンジする時にアドバイスをするぐらいです。

それでは具体的な説明をいたします。
日本の国家「君が代」も、「ヨナ抜き音階」が使われています。 
私たちの生活にも馴染みのある「蛍の光」ですが、実は日本の曲ではなく、
スコットランドの民謡「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne)」が
原曲になります。なぜ海外の曲にここまで親しみを覚えるのでしょうか?
それはスコットランドの伝統の音階が、
日本の音階と一致していたからと考えられます。

「ヨナ」とは、数字を昔風に「ひい、ふう、み……」と数えていった時、4が「よ」、
7が「な」になることに由来します。
C-dur(Cメジャー)では、第4音・第7音にあたるファ(F)とシ(B)が、
なくなりました。これがヨナ抜き音階のうち、「ヨナ抜き長音階」と呼ばれるものです。
♪物悲しい雰囲気の「ヨナ抜き短音階」。第4・第7音にあたる、
レ(D)・ソ(G)が抜けている。
伝統的とはいえ、ヨナ抜き音階は、現在でも演歌やロック・Popsにも使われる
現役の音階です。

2016年に発売され、社会現象にもなった星野源の「恋」。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の主題歌です。
歌謡曲調の雰囲気に、ヨナ抜き音階を用いた特徴的なサビがマッチしています。
現代日本に生きる幅広い世代や様々な背景を持つ登場人物たち、
視聴者たちに直撃した曲となりました。

2017年公開のアニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」
の主題歌、DAOKO × 米津玄師による「打ち上げ花火」。
作詞・作曲は米津玄師です。鮮やかなのにどこか懐かしい。
そんな日本の夏の雰囲気を感じるサビも、ヨナ抜き音階が使われています。
サビの間は第4音・第7音の使用をかなり抑えているのに、最後の最後のフレーズで、
拍の頭に使っています。打ち上げられた花火が消えていき、
現実に引き戻されるような感覚をイメージしてしまいますね。

次はヨナ抜き音階に比べて使われる頻度の少ない、ちょっと珍しい
「ニロ抜き音階」をご紹介します。「ニロ」とは「2」「6」に由来し、
その名の通り第2音と第6音を抜きます。
実はニロ抜き長音階は、沖縄の伝統音階「琉球音階」と同じなのです。
このニロ抜き長音階を用いた曲は、
「THE 沖縄」の雰囲気を感じられることでしょう。

琉球音階の本場、沖縄県出身の3人組アコースティックバンド・BEGINの
「島人ぬ宝(しまんちゅぬたから)」。伝統楽器・三線の音色と、
原風景を思わせる切ない旋律が心に響く名曲です。

CM「三太郎シリーズ」で話題になった浦島太郎(桐谷健太)が歌う「海の声」。
BEGINが楽曲提供しました。ニロ抜き長音階が使われたサビが心にしみますね。

『キリンジ』の名曲「エイリアンズ」のサビは見事なヨナ抜き音階
(ドレミソラしか使っていない)です。
短調の曲なのでニロ抜き音階(ラドレミソ)の曲になります。
どちらにしてもファとシは使われていないですね。

ユーミンの『春よ、来い』は、1994年に発表された26枚目になるシングルです。
同名のNHK連続テレビ小説の主題歌として使用されました。
「春よ、来い」はサビだけですが、見事なヨナ抜き音階です。
でも短調の曲なのでニロ抜き音階の曲となります。

「しゃぼん玉」は長渕剛の代表曲でもある「とんぼ」に近い世界観の曲です。
サビだけじゃなく、最初から最後まで見事なヨナ抜き音階の曲です。
強い男であっても、心の痛み、悩み、どうしようもないような感情を
抱えている…。それでもまた前を向いて生きようとする…。
そんな歌詞と共にフォークロック調のミドルテンポに合わせて歌う、
長渕剛の姿と彼ならではの歌声は、湾岸戦争、ソ連の崩壊や忍び寄る
日本の不景気など…当時のひとびとの心に染み渡ったのではないでしょうか。

資料提供はGuidoor Mediaより抜粋

まだまだ探していけば多くの楽曲にヨナとニロが使われています。
それぞれの国の音階はそれぞれの民族の歴史が刻まれています。
私は世界各国へ出向き現地で伝統的な音楽(音階)に触れてきました。
昨今ではデジタルで作られた音楽は、よりアナログで作られた音源に近づけます。
しかし、実際に現地で聞いた生音の感動や情感を表現することは出来ません。

皆様もなるべく時間の都合がつけばコンサートやライブハウスへ足を運び、
生音を楽しんでください。

感謝の気持ち「有難う」の言葉もメールで送るより目の前で言ってあげてください。
生音は言葉も音楽もエネルギーの交換になります。