余分な知識Ⅰ

 

音楽の勉強をする。

楽典に始まり、作曲の方法、楽器の練習、表現方法、録音技術まで学んで卒業をする。
しかし全て知識として音の事を学ぶのだが音を楽しむ方法は教えてもらえない。
技術を高める事だけに集中して、聞く側の心理を学ばないからである。

聞く側はその時々の感性で音を楽しんでいる事を知らねばならない。

音楽のプロになる。

演奏家として作曲家として歌手として学んだことが実践に役立たない。
正しいと言われた事を忠実に守っているのだが誰も振り向かない。
音の組み立て方が悪いのか音の質が悪いのか答えが見つからない。

自分の主張だけに意識が集中して他人の気持ちから外れるからである。

知識の使い方に囚われる。

一流の音楽家の書物を読み漁って勉強をするが成果がみられない。
どのような知識も無駄では無いが知識を盲信するから無駄になる。
一つの方向に進むべきことが決まったら不要な知識は捨てるべきなのだ。

感動させることが出来ないのは余分な知識が行く手を遮るからである。

音楽を紹介する。

表現する音楽は好きな音楽か・良い音楽か・売れる音楽かを知る事である。
選んだ音楽の方向性が決まったら、それに沿って修練しなければ成果は得られない。

好きな音楽は趣味で楽しめば良いのである。
良い音楽はひたすら技術の習得に励めば良いのである。
売れる音楽は聴衆の心を知り尽くせば良いのである。

しかし一度に三つのカテゴリーを手に入れる事は不可能である。

知識の使い方

いつも悩みを抱えている人は知識から必要な道具を取り出せない人である。
大きな道具箱を抱えていても必要な道具を取り出せなければ道具箱は無用の長物である。
目的に応じた決断と選択が必要である。

その時(Time)に合わせた、その場所(Place)を見て、その目的(Object)を理解しなければならない。
それが物事を考える上での基本であるTPOである。

完璧な譜面を書いたとしても熟練した演奏家がいなければ再現は出来ない。
演奏する会場のコンディションを知らなければ聴衆を感動させることが出来ない。
会場に優秀なスタッフがいなければ運営を任せることは出来ない。

演奏家はそのような無駄な道具を幾ら取り出しても意味がないことを知るべきである。
絶対に必要な事は自分の演奏力から生まれる自信と感動を作るテクニックである。

余分な知識は一切捨て去り演奏に集中する事が重要である。
常に自分が一番必要な道具であることを認識する必要がある。

あなたは人生の道具箱から必要な道具を見つけられるタイプですか。

繁雑に取り入れた知識を整理することが出来ますか。

余分な知識は捨て去るべきなのです。