珠玉の言葉たち




「恩学」を書き始めたころには胸打つ言葉は本の中からでしかありませんでした。
しかし最近ではSNS上に氾濫しています。
勿論、受け取る人が感動すれば記憶に残しておけば良いのですが、
簡単に手に入るものは簡単に忘れてしまうのです。
自分の足で富士山へ登頂した人とその人が写した映像を見るのとでは
感動の度合いが違います。
記憶は頭の中だけで起こる現象ではありません。
五感全部で感じるものです。

人は感動した時にふと頭に浮かぶ言葉があります。
それを書き留めておくことが重要です。
日記や記念写真に書き込めば後々まで変わらぬ感動が蘇りますね。
本日はそんな心に残る言葉を紹介します。

*馬鹿にされる人ほど成長し、馬鹿にする人ほど落ちていく。
*嫌いな人と関わっている程、人生は長くはないが
*大切な人との時間を削るほど、人生は短くない。
*出来ないと思えば限界の壁が出来、出来ると思えば可能性の道ができる。
*出来ることからやる人が、出来ないことをやれる人。
「一生懸命だと知恵が出る」
「中途半端だと愚痴が出る」
「いい加減だと言い訳が出る」
*晴れの日には葉が育ち、雨の日には根が育つ。
*無いものを数えれば不満が増え、あるものを数えれば感謝が増える。
*幸せだから感謝するのではない、感謝できることが幸せなのである。
*毎日の小さな努力の積み重ねが、歴史を作っていく。
*言葉は時に刃物になるし、誰かの背中を押す優しい力にもなる。
*貴方の良さが分からない人のせいで、貴方が落ち込む必要なんて一つもない。

「水はつかめません。すくうのです。心もつかめません。くみ取るのです」
「幸せだから感謝するのではない。感謝できることが幸せなのです」
「楽で苦労しないことを望めば細かなことがくるしくなる」
「あなたを苦しめた高い壁が今度はあなたを守る盾になる」
「他人を変えることはできないが、自分を変えることはできる」
「誰かに与えるとき、それは自分自身に与えることです」
「心の平安は、外の世界ではなく内にあります」
「言葉は力を持つ。それを使って癒すことも、傷つけることもできる」

如何でしょうか?今あなたの心が求める言葉はありましたか?
無理に良い言葉だからと言って覚える必要はありません。
しかし良き言葉を傍に置くとあなたの口からその言葉が出るようになります。

哲学書や仏教書の中には人生に役立つ文章がいっぱいあります。
ひとつご紹介します。

逆風に帆を張るという禅語があります。
「逆風張帆(ぎゃくふうちょうはん)」です。

帆船が向かい風(逆風)にもかかわらず、敢えて帆を張る、の意。
逆境に耐え、前に突き進もうと努力することで、道が開けるという、
禅の言葉です。ヨットは、逆風でも、風の角度を見極め
一定の角度で帆を匠に操れば、斜め前方にジグザグ経路で
前に進んでいく技があります。
これは、飛行機が空を飛ぶ原理の「揚力」と「推力」の関係と
同じことで、帆が翼の役目を果たします。

船は、逆風の中では、何もしないと、ただ流されてしまう。
時には後退さえしてしまう。
だからこそ、逆風の中にいても、その時にできることを懸命に
一歩でも、半歩でも前に進んでいこうとするのです。

白隠禅師のお師匠さんだった正受老人が、晩年に村人相手にやさしい言葉で
生き方を説かれたのが、有名な「一日暮らし」です。
人間の一生、どんな辛いことがあってもきょう一日の辛抱だと思えば耐えられるし、
逆に嬉しいことがあってもきょう一日と思えばそれに耽ることもない。
誰でも、きょう一日、目の前のことであれば頑張れる。
きょう一日一所懸命やればいいと。そうして最後に、
「一大事と申すは今日只今のこと」と締め括っています。

〈境野〉 
心に染みる説法ですね。実は、私は人生の目標って立てたことがないんです。
ただ「縁」だけは大事にして、いつもそれに精いっぱい報いてまいりました。
そうしたら、思いがけず素晴らしい出会いに恵まれ、東洋思想の本を30冊ほど
書かせていただくことができた。ただひたすらご縁に従ってやっているうちに、
こういう自分になったんです。

いまの若い人の中にも、目標が立たないと言って悩んでいる人が多いんですね。
そういう青年たちには、俺も目標を持たなかったよ。だけど人の縁を大事にして、
「今日只今」を一所懸命やってれば人生は開けていくんだよと申し上げるんです。

〈境野〉 
「前後裁断」という禅語もございますね。明日と昨日を切って、今日一日を生きよと。
高い目標達成のためプレッシャーを受けている人も、「今日只今」自分のやるべき
仕事に集中すれば、余計なストレスももらわないし、結果も自ずとついてくると
思います。覿面の今を失うに気づかず

〈横田〉 
正受老人は「一大事と申すは今日只今の心なり」という言葉に続けて、
「それを疎かにして翌日あることなし。全ての人、遠きことを思いてはかること
あれども、覿面の今を失うに気づかず」と説かれています。
遠い目標を持つことも大事ですけれども、そればかりにとらわれて覿面の今、
いま目の前のことを見失っては ならないと。
一刹那正念場というのはそういうことだと思います。

〈境野〉
「刹那」というのは極めて短い時間という意味ですね。
そして禅では「刹那生滅」という言葉もございますが、「生滅」というのは
生きる・死ぬということ。死ぬまであっという間なんだから、
「今日只今」この一瞬を大切に、楽しく明るく生きよという教えなのですね。
私が一番好きな禅語を挙げるなら、やっぱり「喝!」ですね。天地と一体に
なったこの体から迸る「喝!」という音が、悩みや執着を取り去ってくれ、
また新しい一歩を踏み出せるんですね。

〈横田〉 
最近はテレビの影響でしょうか、あまりその真意が理解されていないようですね。
本当は、一切の執着を捨て去って天地いっぱいのいのちを生きるという意味です。
それには「回光返照」といって、外ばかりみる目を内に向けてみることが必要です。

〈境野〉 
やっぱり天地自然の回光を返照して、迸り出るような「喝!」でなければ
いけないのですね。
逆境の中で苦しんでいる方もいらっしゃるでしょうが、この一喝によって
一度自分が固執している価値観、理念、発想から離れてみられると、
そこからまた新たな活路が見出せたりするものです。
なんとか心新たに、一日一日をみんなで明るく生きていただきたいと願います。

作家・東洋思想家の境野勝悟氏と禅の一道を歩み、弊誌でも「禅語に学ぶ」を
連載している鎌倉円覚寺管長・横田南嶺さん。白隠の師・正受老人の言葉から
お二人が読み解く、きょう一日を輝かせる禅の精神とは――。でした。

如何だったでしょうか?
貴方の心に響く珠玉の言葉たちに出会えましたでしょうか?