犬も歩けば棒に当たる




私が22歳の時に英国に行かなければ、
エルビンジョーンズ(世界的なジャズドラマー)にも、
バニーケッセル(世界を代表するジャズギターリスト)にも
アルスチュワート(英国を代表するギターリスト)にも
ジェームステイラー(米国を代表するフォークシンガー)にも
出会わなかった。その経験のおかげで帰国後に大手レコード会社へ入れた。

憧れは現実化する象徴的な出来事である。
座っていても運は開きません。歩いていたから棒に当たったのです。
成功話を聞いて遠い向こうの人の話とは思わずに、
自分にも可能性はあると信じることです。
「思考は現実化する」ナポレオンヒル著

家柄も才能も無くただの風来坊が東大出身に勝てるのは、
同じ青春の時期に机に齧り付いて勉強してきた人達と
闇雲に経験をつみ重ねてきた私の時間の差である。
勿論、長い目で見れば管理能力に優れているのは
彼らであって私ではない。
これは中国の朱子学「知先行後」知識が先で行動は後の考え方である。
私はあえて陽明学「知行合一」の知識と行動が共にある方を選んだ。

大学の時には別れた母親に会いたくて京都から栃木まで
徒歩とヒッチハイクで訪ねて行った。
まさに「母を尋ねて3000千里」を実行したのである。
思い立ったらすぐに行動に移した。立ち止まってメソメソするのは性に合わない。
SONYに入った時も英国から戻ってすぐに電話を入れた。
「私は能力があるのできっとお役に立ちます」この一言で入社した。

スタジオでアルバイト中に聞いた「いちご白書をもう一度」が気に入り
宣伝を独自にやる依頼を事務所にして、その日の夜から深夜番組から雑誌社、
有線放送など電話帳で調べて歩き回った。
全国の大学の映画研究会へ「イチゴ白書再映推進委員会」の手紙を送った。
映画配給会社へラルドへ再上映のお願いにも行った。
たちまち話題になり大ヒットになった。
特に文化放送の深夜番組「セイヤング」谷村新司さんにはお世話になった。

あの頃は手書きで書いたプロデューサーの名刺を持って、
北海道から沖縄までライブハウスや放送局を訪ね歩いた。
そのうちに個人的にプロモーションマップができておおいに活用した。
協力していただいた関係者には最新音楽情報をいち早く届けたのである。
東京の放送局や雑誌社にも海外の情報を含めて送り続けた。
音楽は勿論、ファッションから若者たちのトレンドまで
送り続けているうちに個人的ONAIR率&占有率がNo1になっていた。
いわゆる独占状態になったのである。自社・他社からクレームが入った。

何故かいつも扱いの難しいアーティストは必ず私へ担当依頼が回ってきた。
勿論、私が探して来たアーティストも会社では嫌がれていた。
私は元来天邪鬼なので人が良いとする音楽には興味がなく、
他人が批判する音楽へと関心が向いた。
これが他人よりヒットが多く出た要因である。
これはマーケティングの手法にある。

私はここで「日本人の肩越し文化論」を持論として話し回った。
多くの日本人は人が群がっているところへ肩越しに覗き込み様子を探る。
そして面白そうだったら初めて前へ出る。それから吟味して仕事に導入する。
これじゃスピードに乗れないしオリジナリティの作品は作れない。
この文化論をあちこちで話しているうちに沢山の人に興味を持たれて
いくつも講演の声がかかった。

代理店も雑誌社も放送局もファッションブランドからも声がかかった。
そのうちにレストランのオーナーからも相談に乗ってくれと頼まれた。
文化服装学院からも特別講座を頼まれて講師もやるようになった。
海外にもよく出かけた。レコーディングや撮影を兼ねて
現地のヒット商品を見て回った。
そして必ず地元の食堂やライブハウスへ行き地元民と触れ合った。

現代は情報化社会になり世界がネットワークでつながり
座っていても最新情報が手に入る。
これじゃ歩いて棒に当たる機会が完全に失われてしまった。
80年代後半レコーディングにコンピュータが入り込み、
偽物の音楽が安価で作れるようになって引退を覚悟した。
現場から離れて音楽制作の経営をLAと東京でするようにした。
しかし私が気に入ったアーティストのみ自分で作るようにした。

2000年に入り韓国の映画会社や中国の音楽事務所とも仕事をした。
どちらも反日感情が根底に残っている国である。
だから相手も日本人と仕事をするとなると覚悟がいる。
表面上の友好は結べても腹の底までは分からない。
これは日本側にもあることである。

親の職業や財産の保有、出身校、後ろ盾のある無しで
値踏みをする人が多くいました。今も昔も上から目線で話をする人たちです。
権力を一度握った連中は全てを正当化する。
戦争もこのような人たちの間違った判断で行われたのです。

日本がどんなに言い訳しても侵略した事実は変えられず、
戦時中に悪いこともした人も沢山いたということです。
まだ、中国や韓国の様に反日感情を全面に出している方はマシです。
日本はアメリカに対して一切反米感情を出しません。
日本人は敢えて悔しさを飲み込んだのです。

私の恩学に近い表現をする人がいました。
参考例として取り上げます。

予備校で古文のカリスマ講師吉野敬介さんの言葉です。
俺の考える成功の三原則とは「機敏さ」「行動力」「社交性」だ。

①機敏さというのは、フットワークの軽さだ。気になる情報を耳にしたら、
すぐに調べてみる。興味をひかれた本は、すぐに読んでみる。
思い立ったら、すぐに動くことが大事だ。
②行動力は、まず自分自身が動けということ。どんなに素晴らしいアイデアを
思いついても、自分から動かなければ、何も始まらない。
③社交性とは、積極的に人間と関われということだ。メールより電話、
電話より会いに行け。自分の体と時間を使って、誰かに会って話す時間を
何よりも大切にしろということだ。

如何でしょうか?「感即動」機敏さと行動力です。
そして何よりも人に愛される性格になる事です。
あちらこちら歩かなければ犬も棒に当たることは無いのです。

「犬も歩けば棒に当たる」とは、
① 何かをしようとすれば、何かと災難に遭おうことも多いというたとえ。
② 出歩けば思わぬ幸運に出会うことのたとえ。
さてあなたはどちらのたとえを選択しますか?