看却下

 

足下を観ろ。


中国唐の時代に五祖法演禅師が弟子三人を連れて歩いておりました。

夜なので行燈(あんどん)を持っておりました。
すると突然風が吹いてきて行燈の中のローソクが消えてしまいました。
辺りは真っ暗です。一番頼りとなるべき明かりが消えてしまったのです。


そのときに、五祖法演禅師は弟子達に聞きました。

「この暗闇で一句(ひとこと)言ってみろ」
真っ暗になったとき、今おまえは何をしなければならないのかを五祖法演禅師が聞いているのです。


それぞれが応えたのですが、その中の一人仏果(ぶっか)という弟子の応えた一言、
「看却下」という言葉が禅師の思いに適していた。


暗闇の中ではあわてず騒がず、先ずは足下を見ろと云う事です。
冷静になり対処を考えれば解決の道は開かれる。

それが「看却下」という言葉です。

突然予期せぬ出来事が起こった時にどのように対処するかが問題です。
常日頃から心の準備があれば、冷静に足下を見ることができる筈です。
足下を見ることが出来れば、問題に動じることも無く落ち着いて解決を図れるのです。


剣術では丹田に力を入れることをおしえます。

試合で相手の動きにばかり気を取られていては勝つ事が出来ません。
先ずは腹の下で呼吸をして気を静めるのです。

対戦相手に激しく動き回るのではなく相手の微妙な変化を見つけるのです。
そしてその動きの先を読みながら踏みこんで行くのです。


どの様な場合でも冷静になりやるべきことをやらなければならないのです。


仕事先でこの様なことがありました。

取引先の社長が突然亡くなり生産がストップすると社員一同大騒ぎをしていました。
会社にとって生産が止まると大きな損出を被る事になるからです。


そこに自社の社長が現れて事情を聞きました。
そうすると社長は「先ず我々がする事はお悔やみを申し上げる事だ」と言ったのです。
会社にとっての一大時でも人としてやらなければならないことを先にしなさい。

その後に出来る限りの事をしなさい。


決して、今回の取引先に負担を強いるようなことをするのではなく、
一時的にでも他の取引先にお願をして心配を掛けない様にしなさい。

まさしく「看却下」とはこの事なのです。

突然の出来事に対して最初に何をするべきかが大切です。