笑顔に込められた力
人間における感情表出の一つである「笑い」。
笑いには様々な種類があります。
赤ちゃんが初めて見せる笑いには、生後に学習するものではなく、
生まれつき備わった能力によるものだということを御存知ですか。
新生児がミルクを飲んだあとや睡眠中に笑顔を見せることは、
昔から「神様がくすぐる」などとも言われています。
またその後の発育過程では、誰かが顔を近づけると笑ったり、
特定の人や物に対する笑顔が明瞭になってきます。
こうした赤ちゃんの笑いは単に発育の指標であるばかりでなく、
周囲の人に育児の苦労を癒す重要な行動なのです。
その場の雰囲気を和ませ、関心を維持させる機能を持った生理的行動といえます。
そして成長と共に見える世界は広がり、
その中で新しい笑いの感情や文化を知っていきます。
私達はまだ言葉を持たない頃から笑顔を表現し、周りの人達との関係を自ら作って行くのです。
そこには笑顔に込められた強い力を感じます。「東京江戸博物館」
また違った意味で笑顔の力を証明する出来事をNHKスペシャルが放映していました。
イラクの治安維持にあたっていたアメリカ軍兵士がイラクの住民に取り囲まれ時です。
イラクの住民は、アメリカ軍が自分達の宗教的指導者を捕えに来たのだと勘違いをして攻撃体制を取ったのです。
その一触即発の状況になったときに、アメリカ軍の指揮官は兵士に向かって「Smile!」と命令を下したのです。
アメリカ軍の兵士達が満面の笑顔を見せると、
住民はアメリカ兵に敵意の無い事を知り、最悪な危機を回避することが出来たのです。
その指揮官は世界のあるゆる紛争の地で、
同じような状況に遭遇した時に、最も有効な手段は笑顔であると言った。
武力で威圧するよりも笑顔のコミュニケーションがより効果があるということです。
アメリカのホテルに泊まって、エレベーターで他人と乗り合わせて無言でいるということはまずない。
「Hi」「How are you」とか、とりあえず何かを言う。言わないまでも目で微笑みあったりする。
さて翻って我が日本と日本人はどうだろうか?たいていの日本人は、
エレベーターに乗ると無言で行き先階数の表示を見上げる。
さて、では、エレベーターの中で見知らぬ人と挨拶をするアメリカ人は、
とてもコミュニケーション能力が高くて、私たち日本人はコミュニケーションのないダメな民族なのだろうか。
私は、どうも、そういう話ではないような気がしている。
アメリカはそうせざるえない社会なのではないか。
多民族国家の宿命で、自分が相手に対して悪意を持っていない(好意を持っているではなく)ということを、
早い段階でわざわざ声や形にして表わさないと人間関係の中で緊張感、ストレスがたまってしまうのだ。
私たち日本人はシマ国・ムラ社会で比較的のんびり暮らしてきたので、
そういうことを声や形にして表わすのは野暮だという文化で育ってきた。平田オリザ「わかりあえないことから」
笑顔は力の無い赤ちゃんを守り、戦地で敵からの攻撃を防ぎ、
多国籍社会で安全を保証することが出来るのです。
我々日本人は信頼と思いやりで暮らす事に慣れ、
笑顔の必要性が尊ばれて来ませんでした。
現在はグローバル社会になり人種や宗教や価値観の違う人達との接触が増えて来ました。
語学よりも笑顔のコミュニケーションがどれほど役立つか再認識する時代です。
しかし笑顔を悪用する人達も大勢いるので気を付けましょう。