「直接事例」人の心は数字で動かない




アメリカでこのような実験がなされた。
参加者はアンケートにすべて回答したら5ドルもらえると告げられた。
アンケートは実験とは何の関係もない。回答を終えると、
彼らは5ドルを現金で受け取った。ただし、その現金が入った封筒には、
国際援助団体のセーブ・ザ・チルドレンから寄付を募る手紙が同封されていた。
それにはアフリカ南部で起きている食糧危機について書かれており、
参加者はその手紙をじっくりと読むように指示された。

一つのグループの封筒には「マラウイで食料が不足し、
300万人以上の子供達が苦しんでいます。
アンゴラでは400万人が、家を捨てて避難せざる状況に追い込まれています」
というものなのだ。平均1・17ドルの寄付。

別のグループの封筒には、統計データを一切与えなかった。
こちらの手紙には、マリに暮らす7歳のロキアという少女とともに、
飢餓のせいで彼女が直面している窮状が描かれていた。
平均2・83ドルの寄付。

何百万人の情報よりもたった1人の情報を提示した方が、
アフリカ南部の食糧危機について説得力があったという
解釈が成り立つ。

テレビでも統計的な数字を専門家が延々と述べることよりも、
街頭インタビューで2〜3人の答える方が説得力を増すということである。
私はこの手の手法をテレビというメディアが、さもしたたり顔で
アナウンサーに述べさせている画面には納得がいかない。

2012年に起こった反日運動の時にも中国人の、
今の反応はと言って北京からの街頭インタビューに答える
2〜3人の市民の顔が映し出された。
中国は14億人が暮らしており、その中の2〜3人の意見を
多数の意見であるかのように報道するのは、
詐欺ではないかと憤りを感じてしてしまう。

しかし上記のアメリカの事例でも分かるように、
大方の人の心を動かすのは大数の法則ではなく
少女の涙の方に心が動かされます。

資本主義社会の「数の論理」では既に心が動かなくなっているのです。
それよりも具体的で身近な事例の方が大衆の心は動くのです。
広告代理店が子供の顔と動物の遊ぶ仕草をCMで取り入れる手法です。
でも、みんなは既にこんな嘘には気づいているのです。

子供達を含めた若者達はどう思っているのだろうか?

若者たちは年齢に応じて就職して、結婚して、子供ができて、
ローンでマイホームを手に入れる。
車も家族のためにワンボックスカーを買いキャンプに出かける。

しかし今の時代は大手企業が簡単に倒産する時代である。
経済的な安定の絶対という保証は誰からももらえない。
だから短絡的に今すぐの幸福を求め奔走するのです。

30年ごとの流行サイクルというデータがある。
トレンド(流行)は、新しい、斬新なモノを作り出すことを目指し、
企業が企画・立案して市場に送り出す。

企画の中心は、ある程度の経験と頭が柔軟な現場の30代で行われるのです。
その時のベースとなっているのが、過去の思春期の10年間に
自分が何を求めていたかを思い出して、現代風にアレンジして企画立案する。

又、意思決定権を持つのは管理職の50代で、全く新しいモノには、
売れ行きのリスクを考え躊躇するのですが、昔、流行ったものは懐古的に、
受け入れ易い傾向があり、明確に20年ではありませんが、
「1世代は30年」、「思春期は10年」をタイムラグと考えると
「20年周期」は、ある程度の説得力のある数字だと言えます。

厚生労働省「令和元年(2020年)人口動態統計月報年計」によると
25年前の1995年時点の平均結婚年齢(初婚年齢)より、
2020年時点で男女とも3歳ほど上昇していて、
夫31.0歳、妻29.4歳で結婚している。

思春期的に考えると、社会がより複雑・多様化し、思春期が終了し、
結婚の決断にも時間がかかる傾向にあると言えます。

過去の平均寿命は男性65歳で、女性68歳というのがあり、
それを逆算して人生設計を考えていました。
結婚は男性25歳女性22歳ぐらいでした。

しかし今は人生100年時代です。
全てが平均的に年を増やす考えを取り入れないといけないのです。
結婚適齢期がずれて出産も平均年齢が30代半ばになっています。
その為に定年退職も今の65歳から75歳にして
就労年数を増やすべきなのです。

それを、選挙権を前倒しにして18歳にしたのは無策の政策です。
一層のこと中学生から選挙権を与えた方が面白くなると思います。
本来は100年時代を考えると選挙権は30歳からでもおかしくないのです。

大数の論理を無視して結果を求めると危険な状況になります。
地球の温暖化も20数年前から言い続けているのに何も変わらない。
二酸化炭素による地球の温暖化で自然災害が増えると数字で表している。
にもかかわらず政府も企業も自分たちの利益ばかりを求めて具体案を出さない。

皆様も決断する時期に来ています。
世界を動かしているのは、自分の思考を動かしているのは、何か。
常識で知っている数の誘惑と、目の前の現実の間には
大きなギャップがあり真実が隠されていることを知るべきです。

SNS内の「直接事例」にも惑わされないようにしてください。
統計を信じるか事象を信じるかはあなた次第です。

ものごとをどうとらえるかの判断力が必要な時代です。