パニックのボタン




普段の生活の中でいつもと違う状況に遭遇すると感情が高ぶることがある。
些細な言葉のやり取りでも感情が反応して怒りが出てしまう。
仕事でも既に確認済みのことがまた持ち出されて苛立ちが出てしまう。
その日の気分で異常に神経が高ぶっていて時がある。
そんな人をHSPという。
HSPとは、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質もった人」
という意味で、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」
と呼び頭文字をとって「HSP(エイチ・エス・ピー」と呼ばれています。

私も下積み時代は何事にも極力耐えることが出来たのですが、
プロデューサーの地位を得て生まれつき持っていたHSPが表面化しました。
自分を解放したのです。繊細で感受性豊かな自分を許したのです。
これから音楽を作るうえで大切なことは人の真似をするのではなく、
正直な気持ちがそこに存在しなければ本物のプロデューサーには
なれないと思ったのです。

その時から他人の言葉に敏感になり、音にも敏感になり、
人間関係にも敏感になり、作品作りにもとても神経質になりました。
日本には未だプロデューサーという定義が無い時代でしたから、
お手本になろうと思って無理をしていたのかもしれません。
多くのレコード会社のスタッフが腰の低い営業マンになっていたのが
許せなくて無理やりに形を作っていたのだと思います。

私が「ヒットさせる」といったら強引にヒットにしていました。
かなり傲慢なプロデューサーだったと思います。
ヒット曲は多くの人たちの応援で作られると知っていながら、
レコード会社のスタッフ、事務所のスタッフ、応援してくれるファン、
沢山のメディア、全国のコンサートスタッフに
感謝の気持ちが少なかったと思います。

一人で重積を担ってヒットを出していたと、勘違いしていたことに
とても恥ずかしくなった覚えがあります。

私の好きな言葉に「上善如水(じょうぜんみずのごとし)」
という言葉があります。

『老子』の第八にあります。
上善は水の若し、水は善く万物を利して、しか而も争わず
衆人の悪む所に処る、故に道に幾し
 
「上善」とは最上の善、ここでは最上の善をそなえた人、即ち道に達した人。
「衆人の悪む所」とは多くの人が皆な嫌がる所、即ち水が落ち込む場所。
「道」とは老子の教えの中で云う、万物の本源的なもの、
即ち万物の真実です。禅で云えば究極の悟りです。 
道に達した人は水のようなものです。

水は巧みに、すべてのものに恵みを施し、しかもすべてのものと
争わず、多くの人々が嫌う場所に好んで就こうとします。

優れた禅者も何時(いつ)、何処(どこ)、何事においても、
その場その場の境に成りきって、跡を引きません。
怒る時は徹底怒る、悲しむ時は徹底悲しむ、仕事の時は徹底仕事、
遊ぶ時には徹底遊ぶ、その辺の消息を汲んで禅家はこの語を珍重します。

私もこの言葉を知って生き方を変えました。

参考に「HSPの生まれつきの特性」について記載します。

①深く情報を処理する
場や人の空気を深く読み取る能力に長けていますが、
情報を読み取りすぎるために必要以上に疲れてしまう原因にもなります。

②過剰な刺激を受けやすい
HSPの人は外部からの刺激に敏感なため、人混みや物音・光、食べ物の味や
におい、身につけるもの、気候の変化、人が発するエネルギー等、
五感で受ける刺激に対して過度に反応する傾向があります。

③共感しやすい
親や自分の周りの人の感情を読み取り、自分を合わせることが多いのも
特徴の一つです。また小説やドラマなどで、作品に強く感情移入することも
あります。

④心の境界線が薄い・もろい
心の境界線とは、自分のテリトリーもしくは自分が自分であるための
バリアのようなものです。HSPの人はこの心の境界線が薄くてもろいため、
容易に相手からの影響を受けてしまいます。

⑤疲れやすい
HSPの人は刺激に敏感であるがゆえ、疲れやすいという特徴を持っています。
いつも周りに気を遣っているため、楽しいことであっても疲れてしまう
傾向があります。

⑥自己否定が強い
HSPの人はその繊細さから、対人関係において余り相手を責めることをしません。
良心的で優しく、相手のことを優先する傾向があります。

それなりに誰しもがHSPの性格に当たります。
HSPの人は感情のコントローが出来ない子供のようだと言われることもあります。
私は他人に迷惑をかけない程度ならHSPでも問題ないと思います。
多くの芸術家や音楽家はHSPの人格を持っています。
大丈夫です。

パニックのボタンは良き言葉を思い出しながら深呼吸をすることです。
何があっても「ありがとう」と感謝の気持ちで接することです。

HSPの性格を恥じることも無く自慢する事でもないのです。
上手にコントロールして上手に使いこなすことです。
泣いたり笑ったりして感情に正直にいても良いのです。

しかし、
激しく怒りが出そうなときにパニックのボタンを押してください。
人間関係の基本が守られます。