美辞麗句




親切な言葉や優しい言葉を使う時には注意が必要です。
悪戯に使いすぎると価値のない口先だけの言葉に聞こえてしまいます。
そして使う相手にも気をつけなければなりません。
親切な言葉も愛の言葉も曲解して捉える人もいるからです。
私の何かを奪われるのかと恐怖を抱き逃げ出す人もいます。

言葉を話す側が自分勝手な解釈で親切な言葉は誰もが喜ぶと思わないことです。
社交辞令の言葉も行きすぎると嫌味に聞こえてしまいます。
美辞麗句は巧みに美しく飾った言葉です。真実味のない言葉です。

私達は謙虚に自重する精神を学ばなければなりません。
人の運命は決められているものですから自分勝手に行動しても得られるものはありません。

① 私も成功して勢いがあった時期にはキャパシティーを超える仕事の量でした。
その為に30代後半に突然身体を壊してしまいました。
あの時にもっとセーブして仕事をこなせば人生が変わっていたのかもしれません。

➁そして期待される分だけのお返しをしていたのです。
折角頂いた数々の報酬も全部周りのスタッフに労働対価として払い続け、
気付いた時には一文無しになりました。
自分の分を超えた見栄を張りすぎたのです。

③ 先輩から後輩に対して制作の指導をしても厳しいことばかり言い続けていました。
その為に委縮した後輩は使い物にならず、結局自分で作業を行うことになったのです。
自分の能力を過信しすぎた為に後輩の育成に失敗したのです。

④ プロデューサーという仕事柄「美辞麗句」の言葉を多用してしまいました。
綺麗ですね、声も絶好調ですね、この曲最高ですね、この歌詞は泣けますね、
あなたのお陰でヒットになりましたなど、毎日言い続けていました。

最近知った「禅語」にこのような記述があります。

中国・宋の時代の禅匠、五祖法演禅師がわが弟子の晋山(一寺の住職として
入寺する)に当たっての心得として説いた4つの戒めの一つの語である。

 第一に「勢い使い尽くすべからず」
 第二に「福、受け尽くすべからず」
 第三に「規矩(きく)行じ尽くすべからず」
 第四に「好語(こうご)説き尽くすべからず」

「何が故ぞ、好語説き尽くせば人必ずこれを易しとする。
 規矩(きく)行じ尽くせば、人必ず繁とす。福もし受け尽くせば、
 縁必ず孤なり。勢いもし使い尽くせば、禍い必ず至る。」

一禅僧が承福寺に晋山するにあたっては先輩和尚たちから「新到3年生味噌を食わず」
ということを言われたものだった。禅門の新参者の3年間は一人前とは見なされず
何事においても自重し、古いしきたりや決まりごとに対してもまずはよくこれに従い、
よく観察し、いたずらに新たな改革を試みずによく学びなさいという教訓である。

一番目の「勢い使い尽くすべからず」。若い時というのはついつい、勢いにまかせて
調子に乗り、周囲の助言も聞かずに突っ走ることもある。若さの勢いでの未熟な者が
立場を得、権力を得たりすること危険なことも多い。調子の良い時、順調な時こそ自制し
慎重でありたいものである。「栄枯盛衰試練と思え」
言葉がある通り、調子の良い時こそ試練と受け止め自戒しなければならない。

第二番目の「福、受けつくすべからず」。福というものはその人物に応じた
生涯の福分があるともいう。福は陰徳、隠れた善行を多くおこなう人のところに
集まってくるらしい。だが、いくらその福分がたくさんあるからといって、
湯水のように無制限に使い過ぎればその徳分は失われ、金の切れ目は縁の切れ目
で人も寄り付かなくなり淋しい人生になりかねないだろう。

第三番目には、「規矩(きく)、行いつくすべからず」。規矩というのは戒律などの
決まり事である。戒律はこうだ、規則はこうだと大衆に無理やりにおしつけては、
人に嫌がられ人は逃げ出して行くことだろう。

第四番が、「好語(こうご)、説きつくすべからず」
いくら立派な教えや教義であっても微に入り細にわたって説くのは親切かも知れないが
あまり説き過ぎ、美辞麗句を使いすぎるのも、その言葉の価値が薄く、深みがなく
軽いものになって心に響かない。浅い川は音を立てるが、深い流れは音もなく悠然とし
て流れるようなものである。心貧しい人は語り過ぎ、豊かな人は言葉少なく
ピリッとした一言に重みがある。
人生の生き方として何事においても余白、余裕を大事にしたいものである。


驚きました。
これを若い時に学んでいれば失敗も少なくなっていたと思いました。残念です。

しかし不思議なことに若い経営者の集まりで講演を依頼されたときに、
自分の反省からここに書いている四つの戒めと同じことを言っていたのです。

人間の過ちは古今東西変わらないものだとつくづく思う次第です。

ビジネスセミナーの講師の時にも参考資料は紹介するのですが、先ずはどのように
理解したかを発表してもらいます。大切なことは「教えない・仕切らない・纏めない」
講師が答えを先に言えば生徒の学びの醍醐味を奪ってしまうことになるからです。

過去に講座を担当した時の参考例として、
エリックリースの「リーンスタートアップ」を教材にして失敗を恐れることなく
完成前に市場に出して顧客の意見を取り入れながら成長してください。
また、顧客サービスに関してはトニーシェイの「ザッポス伝説」で痒い所に手が届く
サービスを参考にして考えてください。

ナポレオンヒルズの「思考は現実化する」をバイブルとしていた時期もありました。
また、サティ・アナデラ「Hit Refresh」やW・チャンの「ブルーオーシャン」も参考資料として提案していました。

そして必ずビジネスの話をした後に言う言葉がありました。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
たっぷりと稲の実をつけた稲穂は実るほどに頭を下げていきます。
多くの成功者は成功すると「私が・俺が・僕が」を連呼し背中をそり返します。
そしてここで謙虚になることが人から尊敬を受けることになります。
身近なスタッフや家族への感謝を忘れずに事業を展開してくださいと締めくくるのです。

私は自分の経験したことを嘘・偽りなく発表しています。
そしてブログ「恩学」を通じて多くの方にお知らせしています。

本日のタイトル「美辞麗句」は自戒の念も込めて書くことにしました。
座右の銘「愛語よく回天の力あり」も使い方を間違うと誤解を与えてしまいます。
助言する言葉には気を付けたいものです。