歌の世界
プロデューサーは誰よりも早く「新鮮な歌」を聴くことが出来る。
アーティストが新曲を作った時に一番早くその歌に触れることが出来るからです。
その曲はピアノだけであったりギターだけであったりした作られたものが多い。
(しかし今は時代が変わり完成形に近い状態でデモテープを持ってくる)
まだこの状態では完成形ではないので新鮮な歌ではありません。
デモ曲を聴きイメージが膨らんだ時にOKを出す。
そしてレコード会社の会議にかけて反応を見る。その結果で制作費を捻出する。
基本的には事務所に関係する音楽出版社と合意の上で原盤費を出すことが多い。
新人の場合はプロデューサーが資金集めをする。
レコード会社系列会社の事務所にも声をかける。
全てプロデューサーの「売れる」というひと声で作業が始まります。
アレンジャーは誰にするか?サポートメンバーは誰に頼むか?
どこのスタジオをブッキングするかなどの手配をする。
そしてスタジオ入りして本格的なレコーディングに入る。
先ずはリズムセッション(ドラム・ギター・ベース・キーボード・パーカッションなど)
から録音してテンポの確認とリズムのノリを確かめる。
ここで簡単に仮歌を入れてみる。
その間アレンジャーと曲の構成をどうするか、全体のイメージはどうするか、
歌詞などの確認をして追加楽器の話し合いもする。
ストリングスを加えるかホーンセクションを加えるか、バンドと歌のイメージに
合わせて民族楽器なども取り入れるかです。
最初の日の作業としてはだいたいここまでです。
最後に確認のためコントロールルームでボーカル、メンバー全員で録り終えた
音源を聞き直す。私のいう「新鮮な歌」とはこの状況の中で聞く最初のテイクです。
お茶やコーヒーを飲みながら少し耳を休めて気合を入れて聞くのです。
ここでは音の手直しはしません。あくまでもボーカルの乗っかり方を聴きます。
カラオケにボーカルが心地よくおさまっているかです。
現役、最後の頃(80年代後半)はこれらの作業の半分はコンピューターを使用して
作り始めたのです。いわゆる打ち込みの作業(Mide)シーケンサーを使い、
基本音源を作っていたのです。
音楽はすでに情熱や緊張感から生まれるものではなく作られたリズムに音を重ねる
作業へと移行し始めました。
私のような音の職人には耐えられない作業である。
音のピッチを聞き分けて微妙な部分直しをしたことは過去の話である。
音色にこだわりギターだけLAで録音したこともあります。
しかし今は全てコンピューターが自動的に行うのです。
私の担当ではないのですがSuper Flyの「愛を込めて花束」(2008年)は、
そのようなアナログ的な録音方法で作られた作品だと思います。
私が一番得意とした楽曲作りを感じます。大好きな曲です。
「Super Fly」
愛をこめて花束を
二人で写真を撮ろう懐かしいこの景色と
あの日と同じポ-ズでおどけてみせて欲しい
見上げる空の青さを気まぐれに雲は流れ
キレイなものは遠くにあるからキレイなの
約束したとおりあなたと
ここに来られて本当に良かったわ
この込み上がる気持ちが愛じゃないなら
何が愛か分からないほど
愛をこめて花束を 大袈裟だけど受け取って
理由なんて訊かないでよね
今だけすべて忘れて 笑わないで受けとめて
照れていないで
昨日とよく似た今日は何気ない分かれ道を
分かって選びそびれた臆病のせいでしょう
私は泣くのが得意で
最初から慰めを当てにしてたわ
何度も間違った道 選び続けて
正しくここに戻って来たの
巡り巡る時を超え いつもあなたの所へと
この心 舞い戻ってゆく
無理に描く理想より笑い合える今日の方が
ずっと幸せね
violet, indigo, black nad blue
flame, yellow, purple, sky blue,
pink, yellow green, ash, brown…..
あなたに贈る色は……?
巡り巡る時を超え いつもあなたの所へと
この心 舞い戻ってゆく
ありがとうも言い出せずに甘えていた
今日ここへ来るまでは
愛をこめて花束を大袈裟だけど受け取って
理由なんて訊かないでよね
今だけすべて忘れて笑わないで受けとめて
本当の私を
いつまでもそばにいて
余談ですがMVも良くできています。
60年代のFlower Generationのサイケデリックのテイストが、
ふんだんにちりばめられています。
バンドメンバーもアーミッシュ・ファッションで独特の雰囲気です。
エンディングのサーカステント風の周りのジプシー風親子がいいね。
ノスタルジック大好き生音演奏家大集合です。
中国の安いスタジオを借り切って2~3か月かけて制作をしたいものです。