巧遅は拙速に如かず




以前、システム開発の事業を手掛けている後輩にこの言葉を伝えたところ。
先輩は私の仕事の質が悪いと言っているのですかとクレームが出た。
彼が何故そのように解釈したのか理解に苦しむのである。
常に私が申しているように言葉や文字はどこをとらえて解釈するかが重要です。
それぞれの人が勝手に自分の経験と知識で判断してしまうと間違う恐れがあります。
勿論、文章の意味を検索して、自分なりに理解をするのですが、
その意味をどのように捉えてしまうかに問題点がある。

中国の兵法書「孫子」には、「拙速(せっそく)は巧遅(こうち)に勝る」
という格言があります。
拙速とは、つたなくても速いことであり、巧遅とはたくみでも遅いことです。
つまり、完璧でなくとも「仕事が早い」にこしたことはないという意味です。
私の経験でも、巧遅(こうち)>拙速(せっそく)の構図で
自社も他社も含めてうまくいったためしがほとんどありません。
常に完璧さを追求するあまり、いつも期限がぎりぎりになる人を見かけます。
完璧さを心掛けること自体は、とても素晴らしいと思います。
ただし、時間がかかりすぎて 機を逃しては元も子もありません。

私はこのような説明がなされた時に一番印象に残るのが、
最後の「気を逃しては元も子もありません」です。

私の成功の秘訣は音楽の仕事をしても、マネージメントの仕事をしても、
新規開発で海外へ行っても、チャンスを逃さずスピーディーに反応したことです。
鉄則が「S・S・L」シンプル、スピーディー、ロジカルに徹したことです。
「単純」に「早く」そして「論理的」に報告と説明ができるのかが重要です。

日本人が海外で取引をする時に必ず言われることがあります。
「決裁権のない人との打ち合わせは、時間の無駄になるから
決済権のある人を呼べ」です。

日本の会社の問題点は昔からどのようなことも、上司に確認を取らなければならない
ことです。それは「報連相」(ほうれんそう)のルールです。
その為には単純な問いかけにも時間がかかって機を逃して、
相手は違う会社と取引を始めてしまうのです。
結果、時間をかけて良い条件を提示しても手遅れになり話は終わってしまいます。

2001年に中国の女性演奏家楽団「女子十二楽坊」の資料を受け取った、
次の週には北京に飛び事務所の社長と話し合いを持ちました。
日本の大手レコード会社へ送った資料が私にも送られてきたのです。
即断即決「これは売れる」と判断したからです。

事務所の社長は中国で有名なプロデューサー王暁京(ワンシャオジン)です。
その時に王さんから三つのリクエストがありました。
一「外資系のレコード会社」との契約。
二「ワールドミュージックとして扱う」伝統音楽や民族音楽のジャンルに入れない。
三「コンサートへの助成金」年末に中国で行われるコンサートへの助成金。

私はフリーのプロデューサーですから、
本来は日本のレコード会社と確認を取らなければなりません。
しかし、その時点でリクエストは必ず守ると言い残し帰国しました。

大切なことは、間髪入れずにそこで「覚書」を書かせたことです。
簡単なメモ用紙に「本日より6か月間は稲葉に全権を任せる」と明記させたことです。
私が動いたことにより海外のレコード会社が興味を持ち始めると想像したからです。
現実、その後にアメリカの大手レコード会社が私より良い条件提示をしたのですが、
このメモ用紙があったおかげで私が契約を獲得できたのです。

皆様もさまざまな場面で早い返事を求められることがあると思います。
自分なりの解釈と理解をした上で早く返事を出す訓練をしてください。
オフィシャルな発言でなくても自分の意見は言うべきなのです。

海外の人がよく使う言葉に「マイ・オピニオン」というのがあります。
「私の意見」ということです。返事がなければ話が進まないといことです。
私の意見としては同意をするまたは拒否をするという個人の意見を述べるべきです。

日本人は子供の時から人の話をよく聞きなさいと教えられて来た為に、
自分の意見を言うタイミングが分からないことがあります。
そのために多くの日本人は、何も言わないし、返事もしない、なのに笑顔でいる。
海外の人からは不気味とも言われます。

現代のようなグローバリゼーションで世界を相手にする時には、
日本の品質は世界に勝てる、今すぐに発売しても勝てるという自信を持つことです。
もし小さな改善点があった時には発売してから修正すればよいのです。
新発売「バージョンアップ」という便利な言葉を使えばよいのです。

最後に伝えたいのはお客様からクレームが出た時に、
どうするかで何日も作業にブレーキがかかってしまうことです。

「企業コンプライアンス」という言葉で、
常識人になって警戒しすぎてもビジネスは終わってしまうのです。
問題は起こる前に話し合うのでは無く、問題が起きた時に話し合えば良いのです。
「巧遅は拙速に如かず」です。

人間関係も同じだと思いませんか?

お付き合いする前からあれこれ悩むのであれば先ずは付き合ってみるのです。
勿論、警戒しながらのお付き合いですが、
自分とは合わないと思った時点で辞めればよいのです。

常に動き出さなければ時間の無駄になります。
「感即動」の精神をお忘れなく!