直感力とは
日常我々の会話にも「直感」という言葉は多く出てくる。
「直感」という言葉が出てくる前には「勘」とも言っていた。
あの人の勘はよく当たるよね。
直感は論理的で継続性があり、勘は思い付きの瞬発である。
勘で馬券を買ったら万馬券になった。
しかし直感で馬券を買ったら万馬券になったとは言わない。
世間では直感を大切にという言葉が頻繁に使われるが、
果たして直感とは鍛えられるものでしょうか?
「脳のメカニズムからとらえた場合、直感力とは何ですか?」
この質問に脳学者中野信子さんは答える。
脳の中にはものごとを判断する機構(システム)が二つあります。
一つは迅速に判断を下す機構、もう一つは論理や理性に
基づいてゆっくりと慎重に判断を下す機構です。
前者をXシステム、後者をCシステムと呼びますが、
いわゆる「直感」を決めているのはXシステムだといってよいでしょう。
正しい決断を下すには、Cシステムによって論理的にゆっくりと考えて
結論を出したほうがいい、と多くの人は思うかもしれません。
Cシステムは知性と呼ばれるものを働かせるシステムで、受験勉強に
よって鍛えられるのもこちらです。だから「頭がいい」ということは
Cシステムの働きが優れていることであるととらえられがちなのですが、
意外と見落とされがちなのがXシステムの力、すなわち、直感の力です。
例えば、目の前に美味しそうなものがあっていつのまにか手にとって
口に入れていたという経験や、いわゆる一目惚れなどは、
直感=Xシステムの選です。もちろん、直感の判断が間違うことも
しばしば起こります。
判断を下すとき、私たちはどんな情報を集めているのでしょうか。
論理で決めている遅い判断機構であるCシステムの場合は、
その人の来歴とか、これまでの仕事とか、どういう人と友達なのかといった
既存の情報を総合して判断します。
しかし、Xシステムの場合はもっとわかりやすくて、
「見た目」がほとんどです。香りとか声などの情報も多少加味していますが、
判断の根拠の大半は視覚を通して得た見た目の情報です。
見た目が判断に与える影響を調べた実験はたくさんあります。
例えば、見た目の魅力度を写真で判断させて学生に点数をつけさせ、
その結果、点数の高かった人の写真と低かった人の写真を
それぞれまた別の被験者に見せながらMRIで脳の画像をとる。
すると学生が高い点数をつけた写真だけに反応する脳の領域というのが
あります。そこが、直感で選ぶときに判断を下している脳の領域です。
このときに必要になるのは、直感で選んだ答えを正解にする力であって、
必ずしも正解を選ぶ力ではないんです。
直感力があってなおかつそれが正しいという人は、
正しい答えを選んでいるのではなくて、選んだ答えを無理やり
正解にしているんだと思います。
例えば、織田信長がやったことは正しいと思いますか?
評価できないですよね。ココ・シャネルのやったことはどうでしょうか?
鼻持ちならない女だという人もいるでしょうが、
少なくともブランディングには成功して、商業的にも成功をおさめ、
今でも燦然と輝く不朽の名前になっています。
直感に従った結果をブレズにやり通す力が直感を裏打ちするものだと
教えてくれます。
だから、直感による判断も必要なんです。それを、専門用語で
ヒューリスティクスといいます。例えば、官僚の意思決定について、
どう思います?
官僚はすごく頭のいい人の集団ですよね。
超難関の国家公務員試験に合格した人たちです。
そんな彼らの意思決定がなぜ微妙になってしまうのか?
ヒューリスティクス=直感が欠けているからです。
知識と前例だけを手がかりにしていると、判断は常に遅れますし、
前例のないデータが出現すると対応できません。
これは、現時点のレベルでのAIが行う意思決定と同じです。
「フレーム問題」の例に出される有名な事例ですが、例えばAIに
「世界平和はどうやったら実現できるか」と尋ねると、
「世界中に核爆弾を落として人類を滅亡させてしまえば平和になる」
という答えが出てきてしまう。問題解決にならない答えだけれど、
今のAIはそれをおかしいとは思わない。
では、人間はなぜこの答えをおかしい、ダメだと思うのか。
その人間的な感覚こそがヒューリスティクスです。
直感で選んでダメ男と結婚した場合、相手を消すわけには
いきません。
後悔しつつ、でも結婚してしまったのだから結婚してよかったことに
しなくてはという気持ちが働くのが人間です。
「私は好きになったんだから、このことを無駄にしないために納得しよう」
という気持ちが働く。みんなが「あの人はダメな人だね」と言えば言うほど、
「いや実はいいところもあるのよ」と擁護する。
この状況が認知的不協和です。
直感力や判断力に男女の差はありますか?
あると思いますよね?ところがそうでもないんです。
研究もあって「自分は直感力があると思いますか?」と聞くと、
「あると思います」と答えるのは、男性より女性のほうが多い。
つまり、男性のほうが直感に自信がない。ところが、嘘を見抜かせる
実験をすると、意外なことに少しだけ男性のほうが成績がいい。
男性は直感が働いても、言わないんですね。
直感力が優れているといわれる人は、「こんなこと思いついたけど、
すごいと思わない?」とすぐに口に出してしまうのだと思います。
誰も思いついていなかったわけではなくて、周りの誰かしらは
必ず「それ、私もそう思ったよ」と思っているはず。
でも「これ、すごいと思わない?」と言った人の勝ち。
「すごいでしょ」と言って回って、動き回って「こういうふうにしようよ」
と働きかけていく。そうして実現し始めたら、それはもうその人の
手柄なんです。
だから、思っているだけではだめ。ひらめきは誰にでもある。
それを形にする力があるかどうか。それが、最終的に「直感力がある」
ということなのです。
直感力を養うために大切なこと。
1.正解を選ぶ力ではなく、直感で選んだ答えに取り組み続けて
正解にする力をつける。
2.直感に従った結果をブレずにやり通す力は、論理的な力の裏打ちから
生まれる。
3.直感力に必要な自分をメタ的に見る力は、マインドフルネスで鍛えられる。
如何でしょうか?
直観を自慢する人は上記の三つの項目を実行されているのでしょうか。
思い付きを形にして裏付けを残せば直観のある人と言われます。
あなたも直観を大切にして行動を起こしてください。