未来推敲
未来と聞くと通常100年先を想像しませんか?
農業革命、産業革命、商業革命、通信革命と続いた過去に対して
これからの未来には一体何が起きるのかわからない。
もっとデジタル化が進んで人間は孤独になり喜怒哀楽が削り取られる。
朝からAIに体調のこと、天気のこと、渋滞のこと、会議のこと、
友達との語らいのことも指示されるようになる。
我々は居心地の良い環境で無機質なアンドロイドになる。
もっと近い未来でいうと、今日の積み重ねが未来につながり
いくらもがいてもなるようになるしかない。政府の情報やSNSの情報を
鵜呑みにして疑いを持たなければ最悪の事態を招く。
例えばAIに日本語の詩を読んで意味がわかるか聞いてごらん。
当然、彼らはいい加減な回答しか出来ないと思う。
漢字の組み合わせを読み取っても、その奥にある情緒までは理解できない。
花鳥風月や人間の持つ使命感迄は到底理解できないのである。
坂村真民の「あとからくる者のために」
あとからくる者のために
あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ
あとからくる者のために
しんみんよお前は
詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海を
きれいにしておくのだ
あああとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々(それぞれ)自分で出来る
何かをしてゆくのだ
人間とアンドロイドの違いは他人を思いやる優しさの感情である。
その為に未来を託す子供達に希望の種を植えることである。
戦争の悲惨さは子供達が誰にも構われずに逃げ惑う姿である。
アフリカの飢餓で苦しむ子供が骨だけになっている姿である。
どの国でも母親は誰にも命令されなくても死ぬまで子供を抱きしめるのである。
ここに人としての尊厳が残されている。母親は生命の循環を守りたいのである。
しかしこの状況では知識も近代科学も文化も何も用をなさない。
未来は本当に我々に幸福を齎(もたら)せてくれるのだろうか?
未来の子供達に何かを残せるのだろうか?
いつも科学の進化は人間たちを壊していくだけである。
そして未来に芸術家は存在するのだろうか?
今の絵画も音楽も伝統文化も、すべて古典として記録されると思うが、
未来の芸術は技術者がマウスを使って作り出す一つのデーター作品に
なっているかも知れない。
誰しもが肉眼で鑑賞することなく、メタバースの美術館で、音楽ホールで
ゴーグルをつけてゲームの様に鑑賞することになると思う。
私が学生の頃に聞いたS&G(サイモンとガーファンクル)の
「夢の中の世界」という曲の詞に、
それは水彩で描かれた静物画
たった今, 夕方近くの
レースのカーテンを通して陽が差し込み
影が部屋を洗い流し
僕らは座ってコーヒーを飲んでいる
お互いの無関心の中に横たわり
海岸に打ち上げられた貝殻のように
海が唸り声を上げるのを聞くことができる
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる
君はエミリー・ディキンソンを読み
僕はロバート・フロストを読んで
二人は栞を挟んだ読みかけの頁に目を落とす
それは僕らが失ったものを測る物差し
出来の悪い詩のように
僕らはそれぞれリズムが取れない詩の一節
韻を踏めない対句、切り分けられた時と
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる
確かに僕らは大事なことを話してはいる
語られなければならない言葉で
「解析することは価値を持ち得るだろうか」
「戯曲は本当に死んでしまったのか」
そしていつの間にか僕らの部屋は色を失い
僕はただ君の影にキスをする
もはや君の手さえ感じとることができない
いま君はまるで見知らぬ人であるかのよう
宙ぶらりんの会話の中で途方に暮れ
うわべだけのため息が
僕らの人生を分け隔てる
この情景と感情の入り混じった歌詞はAIでは作れない。
ポール・サイモンに脱帽です。
未来は明るい、未来はバラ色だ、未来は夢が溢れている。
だから勉強を、仕事を、頑張れと似非成功者はみんなそういうのだ。
未来は君の頭のイメージ通りにしかやって来ない
自分は独立して経営者になるのだ。自分は開発分野ですごい発明家になるのだ。
自分は何もしないで、手に入るものだけで生きていければ良いのだ。
そう思うと必ずその通りになる。その方法が間違っていなければ見事にそうなる。
今日生きたようにしか未来はない
未来は何もしなくてもやって来ると勘違いするな
未来は金持ちが作ったシステムの中に放り込まれることではない
未来は科学や経済で作られた住みやすそうな檻の中で暮らすことでは無い
愛する人や、愛するペットが人工的に作られる世界がやって来る
未来イコール幸福だと勘違いするな!
今日生きたようにしか未来はやって来ない。
だから自分で未来を創り出すのだ。