北野武「感動」



私たちエンタテインメントの世界では常に「感動」という
言葉が多用されます。感動はあらゆる技術だけでなく
相手の情感をいかに引き出すかの技術が必要です。
これは知識から得られるものでは無く経験から取得しなければ身に付きません。

北野武監督がこのように「感動」を体系化して語る事ができる能力に脱帽します。
喜劇人としてだけではなく映画監督として数々の受賞歴が、
その才能を物語っています。

ほんとうの感動は、やった奴しか分からない。

北野武の言葉No1

(1)
努力すれば、きっとなんとかなるって、
そんなわけないだろう。
一所懸命やればなんとかなるほど
世の中甘くないってことは、
親とか周囲の大人が一番知ってんじゃねえか。
必死にやってもうまくいくとは限らなくて、
どうにもならないこともある、
それが普通で当たり前だってことの方を
教えるのが教育だろう。

(2)
鳥のように、自由に空を飛べたら、
魚のように泳げたら、なんて思わない。
自由を楽しむ生き物などいない。
生きて行く事は、つらく、悲しく、
目的も分からないものだ。

(3)
成功の秘訣は、
いちばんなりたいものじゃなくて、
その人にとっては二番目か三番目の、
違う仕事に就くこと。
自分にはもっとやりたいことがあるんだけど、
今すぐにそれをできる能力はないから
違うことをやってます。
それぐらい自分を
客観的に見られるやつのほうが、
成功する可能性は高い。

(4)
物体は激しく動けば、
それだけ摩擦が大きくなる。
人間だって、激しく動くと熱を持つのだ。
はたから見れば、輝いている人間のことが、
きっと羨ましく見えるのだろう。
だけど、輝いている本人は熱くてたまらない。
星だって、何千光年という
遠くの地球から見れば、美しく輝く存在だ。
「いいなあ、あの星みたいに輝きたい」
人はそう言うかもしれないけれど、
その星はたまったもんじゃない。
何億度という熱で燃えている。
しかも、燃え尽きるまで、
そうやって輝いていなくちゃいけない。
これは真面目に、結構辛いことなのだ。

(5)
いまの社会は、人生とは何かとか、
人間の生きる意味は何か
みたいなことを言いすぎる。
若い人には、それが強迫観念になっている。
何かとそういうことを言う大人が悪いのだ。
自分たちだって、
生きることと死ぬことの意味なんか
絶対にわかってないくせに。
天国や地獄が本当にあるのかも、
神様がいるのかいないのかも、
誰も証明したことがないわけだ。
そういう曖昧な状態なのに、
生きる意味を探せなんてことを言われたら
誰だって迷うに決まっている。

(6)
自分の子供が、
何の武器も持っていないことを
教えておくのは、ちっとも残酷じゃない。
それじゃ辛いというなら、
なんとか世の中を渡っていけるだけの武器を、
子供が見つける手助けをしてやることだ。
それが見つからないのなら、
せめて子供が世の中に出たときに、
現実に打ちのめされて傷ついても、
生き抜いていけるだけの
タフな心に育ててやるしかない。

(7)
他人への気遣いで大切なのは、
話を聞いてやることだ。
人間は歳を取ると、
どういうわけかこれが苦手になるらしい。
むしろ、自分の自慢話
ばかりしたがるようになる。
だけど、自慢話は一文の得にもならないし、
その場の雰囲気を悪くする。
それよりも、
相手の話を聞く方がずっといい。