自然の中にある
意識して自然は作られていない人間も同じ様に意識して作られていない。
意図的に作るものは全て自然ではない。
都会は人工物で意図的に作られた世界である。
人間の誕生も0,2ミリの卵子に偶然的に精子が入り込み奇跡の様に作られる。
土から生まれて土に帰るとは自然界にある食物を食べているからである。
人間の体はそうして作られている。だから田んぼを見ると私の体はここで
作られていると思う。人間の細胞は速い勢いで新細胞と入れ替わっている。
昨日の自分と今日の自分は同じ人間ではない。養老孟子
「馬よりすごい日本人」
明治時代、日本に招かれたお雇い外国人のエルヴィン・フォン・ベルツは、
27年にわたって日本に西洋医学を教え、医学の発展に尽くしたドイツ帝国の
医学博士です。ベルツは日光東照宮の観光を勧められ、ある日110kmの道のりを、
馬を6回乗り換えて14時間かけて行きました。ところが2度目は車夫に依頼した
ところ、なんとその車夫はたった一人で、馬より30分余分にかかっただけで
東照宮に着いてしまったのでした。
普通に考えれば、人間より馬の方が体力はあるし格段に速いはずですが、
これではまるで逆です。この体力はいったいどこから来るのだろう。
ベルツは驚いて車夫にその食事を確認したところ、「玄米のおにぎりと梅干し、
味噌大根の千切りと沢庵」という答えでした。
聞けば平素の食事も、米・麦・粟・ジャガイモなどの典型的な低タンパク・低脂肪食。
もちろん肉など食べません。ベルツからみれば相当の粗食でした。
驚いたベルツは、この車夫にドイツの進んだ栄養学を適用すればきっとより一層の
力が出るだろう、ついでながらその成果を比較検証してみたいと実験を試みました。
「ベルツの実験」です。22歳と25歳の車夫を2人雇い、1人に従来どおりのおにぎり
の食事、他の1人に肉の食事を摂らせて、毎日80kgの荷物を積み、40kmの道のりを
走らせました。
すると肉料理を与えた車夫は疲労が次第に募って走れなくなり、
3日で「どうか普段の食事に戻してほしい」と懇願してきました。
そこで仕方なく元の食事に戻したところ、また走れるようになったそうです。
一方、おにぎりの方はそのまま3週間も走り続けました。
当時の人力車夫は、一日に50km走るのは普通でした。ベルツの思惑は
見事に外れたのでした。彼はドイツの栄養学が日本人にはまったくあてはまらず、
日本人には日本食がよいという事を確信せざるをえませんでした。
また日本女性についても、
「女性においては、こんなに母乳が出る民族は見たことがない」と
ベルツはもらしています。その後ベルツは日本女性を娶り、
帰国後はドイツ国民に菜食を与えたほどでした。
ベルツは無条件で西洋文化を受け入れようとしている日本政府に対し、
こんな言葉を残しています。
「もしあちらのすべてを受けようというのなら、日本人よ、おさらばだ」と。
フンザ食の実験
車夫は努力して「玄米のおにぎりと梅干し、味噌大根の千切りと沢庵」を
食べていたのでしょうか?きっとそれが当たり前の暮らしだったのでしょうね。
健康は意識して成すものではなく、無意識のうちに自然に形成される底力のような
ものです。ですが私たちは西洋料理の美味しさも知ってしまいました。
どうすることが最善なのでしょう。
以前アメリカは「がんの発症率が世界で一番」でした。
政府は医療費負担の増大の問題もさることながらその原因と解決を
至急調べるように研究機関に通達しました。
世界中を調査したところ当時日本人にはガンを発症する人がほとんどいないことに
気づきました。その為に日本の食生活を取り入れてがんの発症を抑え込んだのです。
それが今や日本人の死亡率の一位がガンです。
元気で強い日本人はアメリカとって都合が悪くその為西洋料理を推進したのです。
牛乳や肉食を奨励してそのうえ甘味類のお菓子やジュースも強制的に取り入れるよう
植え付けてしまったのです。戦後の「ギブミーチョコレート」はその象徴です。
自然界の食物は体力形成には無くてはならない物ばかりです。
それを加工して添加物や調味料を加えた食品を電子レンジで温める(放射線漬け)。
身体を悪くするすべての要素が日本の現代人の食生活です。
オーガニックレストランを49年間経営している友人から聞いた話です。
マクロビオティックの基本理念は3つ
「一物全体」(自然の恵を残さず丸ごといただくこと)
ひとつのものを丸ごと食べる、という意味です。食材そのものは、
丸ごとでバランスがとれており、穀物なら精白していない玄米、
野菜なら皮や葉にも栄養があり、
全てを摂ることでからだのバランスがとれるという考え方です。
「身土不二」(暮らす土地の旬のものを食べること
人間も植物も生まれた環境と一体という意味です。例えば、熱帯地域でとれる
フルーツには体内の熱を下げる働き、寒い地域でとれる野菜には体内を温める
働きがあり、四季のある日本では、季節ごとの旬の食材をとることで、
からだのバランスがとれるという考え方です。
「陰陽調和」(食材、調理法を陰陽に分け、そのバランスをとること)
すべてのものに「陰」と「陽」がある、という考え方があります。陰性の食材とは
上に向かってのび、からだを冷やす作用があり、陽性の食材とは地中に向かってのび、
からだを温める作用があると考えられています。
旬の食材を例にすると、夏のキュウリ(陰性)は、ほてったからだから熱をとり、
冬のゴボウ(陽性)は、冷えたからだを温め、わたしたちのからだのバランスをとる
手助けをしてくれます。マクロビオティックではこの陰性と陽性のバランスがとれた
状態(中庸)を大切としています。
ベルツはドイツの栄養学が日本人にはまったくあてはまらず、
日本人には日本食が良いという事を確信しました。
それにもかかわらず、明治政府の指導者たちはベルツの「日本人には日本食」という
研究結果よりも、フォイトの「体を大きくする栄養学」の方を選んでしまったのです。
時は流れ、戦後に食の欧米化がさらに進んだことはご存知のとおりです。
「健全なる精神は、健全な身体に宿る」と言われます。
私たちは自然界からの贈り物を享受できる国なのです。
自然の中に強く生きるヒントが隠されています。