具象と抽象




今回の文章は対話集会「老人と孫」で中学二年生の女の子の質問です。
「画家を目指しているのですがどうすればなれますか?」の
解答として書きました。あなたは具象と抽象のどちらが希望ですか?
彼女ははっきりと抽象画家を目指していますと応えてくれました。

「絵画とは何か」あるいはもっと広く「イメージとは何か」という
ストレートな、しかし困難な問いにアプローチをするうえで
手掛かりとなる、西洋の三つの神話から話を始めたいと思います。
その三つの神話とは「影」と「痕跡」と「水鏡」にかかわるもので、
それらがいわば絵画の起源となっている。
 
「影」については、大プリニウスが『博物誌』(第35巻)で
伝えているように、戦地に赴く 恋人の影の輪郭をなぞったことから
絵画が生まれたという神話が残っています。

一方、「痕跡」というのは、キリスト教の言い伝えに由来するもので、
東方教会では「マンディリオン」として、カトリックでは「ヴェロニカ」
として伝わっています。いずれも、
ハンカチに残されたイエスの顔の「痕跡」のことを指すものです。

最後に「水鏡」ですが、これはもちろん名高いナルキッソスの
神話に基づいているものです。
鏡が画家にとってすぐれたお手本となるという考え方は、
古くはプラトン(『国家』 596 d9-e1)に、さらにレオナルド・ダ・ヴィンチら
ルネサンスの画家や理論家たちにも見られるものです。
絵画の根元を巡ってより。

昔は全て具象で表現できるものが正しくて
抽象のものは相手にされなかった。
しかしこれからは抽象的なものの方が共感を得やすい。
AIは具象には実力が発揮しやすいが、
抽象はデーターがないので描けない。
勿論、ブラック風とかピカソ風に書いてと要求すれば、
それなりの作品は描かれるが価値がまったく無く
共感の対象にはならない。
画家が独自に描く抽象画は理解できる人にしか感動は伝わらない。

具象絵画とは、具体的に意味のわかるものを描いた絵画です。
それに対して、抽象絵画とは、
何が描いてあるのか具体的にはわからない絵画のことです。

全ての絵画は、具象か抽象かという区分けで考えることができます。
それはわかりますよね。何が描いてあるかわかるか、わからないかの
どちらかですと言っているのと同じですから。

その時に、その中間があるのです。
それを「反具象」という場合があります。
「非具象」という場合は、
ほとんど抽象を言っていることが多いでしょう。
私は、中間の物は、半分具象だから「半具象」で
良いのではないかなと思ったりします。

だから、絵を見る場合、完全に具象だなと言ったり、
やや抽象がかっているねと言ったり、
完全抽象だねといったりして、区分して話します。

ただし、絵の良さを考えるときは、造形的に見たら良いとか
悪いとか言う場合が多くて、その場合には、抽象的に見ます。
抽象的に見ると言うのは、造形要素でみるのです。

例えば、調和が取れているとか、バランスが良いとか、
リズムが良いとか、アクセントがきいているとか言います。
これらが、造形要素です。

鑑賞の仕方が分からない」「何が描かれているのか分からない」
「自分でも描けそう」など様々な意見がある抽象画です。

抽象画が生まれる以前はどの作品にも主題やモチーフがありました。
風景、人物、静物など具体的に存在するものが描かれた作品たちです。
抽象画とはその反対に存在しないものを描いた芸術のことです。
抽象画家は実際に存在する具体的な対象物の造形ではなく、
対象物の点、色彩、形、線といった造形要素を構成し、
その美しさを芸術表現としました。

抽象画は芸術運動の名前ではなく、世界一次大戦前夜にモスクワ、
パリ・ミュンヘンなどで同時多発的に発生した絵画表現です。

その流れの一つは「近代絵画の父」と呼ばれる後期印象派の画家
セザンヌの「自然の中のすべての形態を円筒、球、円錐で処理する」
の言葉から影響された、ブラックとピカソが創始したキュビズム。

ジョルジュ・ブラックとパブロ・ピカソが生みの親であるキュビズム。
それまでの具象絵画は一つの視点に基づいて描かれていましたが、
キュビズムは「いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収める」
手法を発明しました。
多くの芸術家を驚かせたこの技法は、多くのアーティストによって
現代も引き継がれており、近代美術史の中でも重要な発明の一つです。

「色が明るくて素敵」とか「構図が大胆」、「絵具のタッチが面白い」など、
見たまま楽しむのも、また色やイメージから何かを想像して楽しむのも
鑑賞の一つです。

抽象画の中には音楽的リズムが主題になっているものを多くあります。
そのリズムの心地よさを想像するのも良いでしょう。

アクションペインティングのような躍動感を感じる作品には
迫力を感じるという人が多くいます。
また、カラーフィールドでは気に入った色が見つかるかもしれません。
感性の赴くまま鑑賞するのもおすすめです。

現代を代表する抽象画家
ルシアン・フロイド(Lucian Freud, 1922 – 2011)は、
キャリア当初はシュールレアリスムなどの影響も受けていましたが、
身近な人物を描いた独特の肖像画を中心とした
作風に徐々に変化していきます。
モデルの精神的な状態までも抉り出すような
厚塗りの技法で緊張感のある絵画を多く残しています。
モデルが苦痛を感じるほど長いポーズ時間を
要求することでも有名でした。

キース・ヘリング(Keith Haring, 1958 – 1990)は、
アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル・バスキアなどと同様に、
1980年代のアメリカ美術を代表するアーティストです。
80年代初頭にニューヨークの地下鉄で、使用されていない広告板に
ヘリング独特のキャラクターを描く、通称「サブウェイドローイング」
というグラフィティ・アートを始めました。
そのコミカルで誰もが楽しめる落書きは、
地下鉄の通勤客の間で評判となり、
一躍ヘリングの名を広めることになりました。

ジェフ・クーンズ(Jeff Koons, 1955-)は、バルーン・アートや
マイケル・ジャクソンの彫像など、
大衆的でキッチュな作品で知られるアーティスト。
特に、バルーンで作られたウサギを模したステンレス製の
彫刻である「Rabbit」は2019年に約100億円で落札され、
現在もなお存命中のアーティスト
作品の最高額として記録を残しています。

私の書斎にも米国で著名な画家が描いたキュビズムの作品があります。
そして彼の描いた抽象画も数点飾られています。
その他、中国・西安の美術館オークションで購入した水墨画もあります。
勿論、友人の描いた「覚悟の白富士」も飾ってあります。

昔から書籍と絵画に囲まれた生活に憧れがありました。
そして大音量でムソルグスキーの「展覧会の絵」を聞くのです。
これにロッキングチェアーとパイプタバコをくゆらすと至福の喜びです。
孫たちよ!これは老人のささやかな春の夢でした。