意識と関心の結び方
私がレコード会社に入ったばかりの時にはマーケティングの資料もなく、
本屋へ行ってもこの手の本は販売されていませんでした。
その為に私は独自にマーケティングの方法を創り出したのです。
毎月違う分野で働いている友人を集めてヒットの分析と予測を行いました。
代理店、出版社、放送局、映画監督、デザイナーと話し合い、
それぞれの来年の計画を聞けば流行の流れを掴むことが出来るのです。
同時に地方の放送局や新聞社、ライブハウスのオーナーなどへ電話を入れて
今、何が流行っているかを常にリサーチしていました。
その結果地域によって売れる商品に変化があることを知りました。
新人をデビューさせる場合に、歌唱力のある人は北海道から、
アイドルは愛知から、ハードロックは九州から、フォークは関西からと
エリアを分けることによって、ヒットのキッカケづくりをしていたのです。
商品を販売する時にお客様が意識していることを
的確にとらえて関心を引き起こさせなければ購買に繋がりません。
私のヒット作品はお客様が潜在的に望んでいることを分析して、
音楽と映像を目の前に提示していくのです。
併せてメロディーもリズムも時代性を感じるように作ります。
勿論、消費者に伝わるキャッチコピーも必要になります。
最近のテレビのCMを見ていると同じ人が頻繁に登場して
商品の宣伝をするのですが、マーケティングの手法を完全に無視した
大量露出で視聴者の記憶に残す古いやり方です。
これはプロの仕事ではありません。
意識は直観的に捉えることであり、関心は必然的に求めることです。
「意識が行動を決め、無意識が反応を決める。
そして反応は、行動と同じく重要だ」。
これはE. Stanley Jonesの言葉です。
こんなことをご存知でしたか?
私たちの心は2つの異なる小さな意識から成り立っており、
それぞれが違う方法で働き、別の機能を果たしています。
無意識は、人間の自然の本能や習慣の全てを構成し、
意識は己の意思による行動を起こさせているのです。
無意識は人間の脳の99%を占め、行動の大半につながっていますが、
意識は日常の行動のほんの一部を生じさせているに過ぎません。
検索データにより素晴らしい洞察力を手にすることができますが、
それだけでは不十分。
ユーザーの意識を知るためのデータに過ぎないからです。
ユーザーが何を意図していたかを特定するデータだけでは不完全で、
ユーザーの無意識を知ることも必要なのです。
ユーザーが何を好み、何を欲し、何を望んでいるのか、
その全体像を本当に知りたければ、
ユーザーが検索している先にあるものにも目を向け、
ユーザーの喜びの源が何かを深く見つめることが大切なのです。
例えば、ファッション関連のコンテンツに「関心」がある人が、
必ずしもファッションに関する用語を検索したり、
SNSでファッションの話題をシェアするとは限りません。
人の「意識」に関するデータだけでは、こうしたユーザーの
「関心」にまで掘り下げて理解することは難しいのです。
ユーザーのコンテンツの消費状況やエンゲージメントを
理解することができてはじめて、ユーザーの「無意識」に迫り、
ユーザーの真の好みを把握することができるのです。
ある大手CPG (消費財)ブランドの場合、
ベビーケア関連のコンテンツのモバイル機器での読者獲得率が
最も高いのは、午前2時~4時の間であることも分かったのです。
これはなぜなのでしょうか?おそらく多くのママたちが、
赤ちゃんの授乳のためにこの時間帯に起きていて、
まさにその瞬間の自分のニーズにぴったりのコンテンツに対して
素早く反応するからなのでしょう。
このことが事前に分かっていれば、この時間帯に配信するコンテンツを
ターゲットユーザーに特化したものにすることができるのです。
例えばこんなことが考えられますよね。
記事のタイトル例 - 「午前4時の授乳時にすべき5つのこと」
記事のコンテンツ例 - 「つらい咳のせいでなかなか眠れない赤ちゃんを
あやそうと午前2時に頑張っている新米ママ…」
次回、皆さんが包括的なコンテンツ戦略を策定する
際には、入手可能なデータソースを検討し、
ユーザーの「意図」に関するデータだけでなく
「関心」についてのデータも必ず活用するよう、心がけてみてください。
意図と関心に関するデータは相互に補完し合うものであり、
この2つが融合することで、ユーザーに喜びを与える方法を
より広い視野で理解することができます。
これぞ、まさにコンテンツマーケティングと言えるのです。
Outbrainより
私はビジネスプロデューサーとしてこのマーケティングと
同様な手法をスタートアップ企業へ教えてきました。
私が理事として参加しているTFL東京ファッションデジタルラボでも、
何回か講座も受け持ちました。
この手法に興味のある方は、
マーク・ジェフリー「データ・ドリブン・マーケティング」を
参考にして学んでみてください。