型をつくる




高校生のアマチュア演奏家と話し合しあう機会がありました。
北海道から安いチケットを購入して東京のライブ会場に来たという事でした。
彼らがプロの演奏家の間に入り一生懸命演奏している姿に感動しました。
大勢のお客様の前でも物おじしないのにはびっくりです。

今は上手になる環境が整っているので驚くほど演奏が達者です。
ネットで憧れのアーティストの画像を無料で見ることが出来るので、
演奏スタイルを真似することが容易にできます。
その上に楽器の手入れから、機材の使用方法から、演奏テクニックまで
解説しているサイトもあります。

我々の時代では、レコードを聴いてコピーして覚えることしかできなかった、
そしてコンサート会場で指の動きや音の出し方を見て学ぶしかなかったのです。

それよりも高校生が東京へ行き、ロックのライブに出演したしたとなると、
紛れもなく停学の時代でした。ロックイコール不良だと決めつけられていた時代です。

アーティストの友人伊丹谷良介氏から一言アドバイスをしてもらえないか
ということで話をしました。

「自信を持ちなさい!好きなことをやっているのだから臆病にならず自信を持ちなさい」
今はとりあえず憧れの演奏家の真似を徹底的にしなさい。
そして、少しでも発表する場が出来れば、思い切りお客様の前で持てる限りの
テクニックを披露しなさい。その覚悟が必要です。

周りから何を言われても気にすることは無い、
自分の望んだことをやっているのだから自分をしっかりと見守りなさい。

一番大切なことは自分の演奏がお客様の呼吸感と同じようになることだ。
アマチュアは自分が気持ち良くなることで満足するが、
プロはお客様の気持ちを良くして満足する。
だから「音程は外してもお客様の気持ちは外すなよ」

呼吸感とは、自分が悩みを抱えているなら、お客様も同じような悩みを
抱えていると思いなさい。
雨の日は憂鬱になり、晴れの日は快適になる、
失恋すれば悲しいし、それぞれみんな悩みを持って生きているのだ。

お客様も音楽によって一瞬でも悩みを忘れたいと
遠いところから見に来てくれているかもしれない。
よい音楽は人の心を癒してくれるのです。

「練習は自分の為に本番はお客様の為に、
そして夢と喜びを提供するのがプロです」これを忘れないように。

そのような話をしている時にこのようなことを思い出しました。

参考に掲載します。

昔から「若いときの苦労は買ってでもせよ」ということわざは
皆さま方もよくご存じのことだと思いますが、
昨今、なかなか聞かれることが少なくなったように感じます。
なんでも簡単にできてしまう現代社会において、身を以て経験し、
苦労をして体得することは時代遅れ、非効率、無駄なものとされているように
感じるからでしょうか。
そんな現代だからこそ、より一層大切なことに思います。 

利休居士の訓(おしえ)をわかりやすくまとめた『利休道歌』に
「規矩(きく)作法、守りつくして、破るとも、離れるとも、本(もと)を忘れるな」
と記されております。 
まずは師から教わった型を徹底的に真似て、学び、
「守る」ところから修業や鍛錬といった下積みが始まります。

そうして師の教えに従って、修業・鍛錬を積み重ね、その「型」を体得致します。
その後、師の「型」をはじめ、他の「型」も自身と照らし合わせ、
工夫し、悩み、もがき、苦しみを乗り越えることで、自分らしい「型」を模索し、
はじめて既存の型を「破る」ことができるのであります。

さらに修業・鍛錬を積み重ね、かつて教わった師の「型」と
自分自身で見出した「型」の双方に精通することで、
既存の型にとらわれない「型」から「離れ」、自在となることができるのです。 

しかし、「本(もと)を忘れるな」とある通り、「型」を破り離れたとしても、
その奥深くにある根本の「本」を見失ってはならないのです。 

まして、基本の「型」を会得しないままに、
いきなり個性や独創性を求めることは、いわゆる「形無し」なのです。

十八代目中村勘三郎さんの座右の銘
「型があるから型破り、型が無ければ形無し」といわれる所以です

中国の古書にも、
「一般的に百の技は功に始まり拙におわる功と拙が合わさり神妙となる」
名人と言われる人の作品ほど稚拙に見えることが多いのです。
その逆に未熟な人ほど技巧に走り派手に見せようとするから技が多いのです。
「型」を守り、「型」を切り離しても、「本」を忘れるなよということです。

好きな音楽も、良い音楽も、売れる音楽も、アーティストは、
お客様と対峙して感動を作り出すのが仕事です。
正しい「型」を習得しましょう。