素直

 

素直の「素」は模様や染色を加えない生地のままの様子。そのしろい布である。
素直の「直」は一(まっすぐ)+目で、まっすぐに一つの方向に目を向けることを示す。

自分の思い描いた目標・目的をしっかりと見据える状態である。
その素直さを持ちながら使命感を全うする心が「志」である。

素直なままの心を遮る一番の原因は「恥」である。
恥という文字は耳の軟らかさに心が寄り添っている事が表現されている。

すなわち、心が軟らかいとすぐに動揺して気持ちが折れてしまうことである。
その気持ちを強くする為にも「志」が必要なのである。

学生から社会に出て最初に感じる事は理不尽である。

上下関係だけで押しつけられる様々な要求は理屈に合わない事が多い。
その理不尽に打ち勝つ為に自分自身の高い志を持たなければならないである。

志とは使命感である。使命感とは生きている理由を知ることである。
自分の欲で生きるのではなく、他人の幸福を願って生きることである。

決して世の中に裏切られても傷つくことを恐れるな。
苦しさから逃れるために安易に妥協などするな。
つねに社会の裏切りを予測しながら逞しくつき進むのである。

「恥」に負けない為にも「誇り」を持たなければならない。

「誇り」という字は大きく足を広げて立ち、おおげさに物言うことである。
出来るか出来ないかじゃなくてやってやるという気概を持つことである。

どのような環境でも素直なままで歩き続けていて欲しい。
どのような境遇でも素直なままに受け入れて欲しい。
どのような運命でも素直なまま貫き通して欲しい。

他人と比べる価値観ではなく自分の作り出す価値観を大切にして欲しい。

純粋な思いが心なき言葉によって傷つけられても負けないで欲しい。
見えないところで泣き叫び、人前では笑顔を取り戻して平然としていてほしい。
弱い自分を守りながら歩みを止めずに前向きに歩き続けていて欲しい。

他人の誘惑や甘言に惑わされることなく心の素直なままに生きて欲しい。

「富貴はたとえば則ち春夏なり。人の心をして蕩せしむ。貧賤はたとえば即ち秋冬なり。

人の心をして粛ならすむ。故に人富貴に於いては即ち其の志を溺らし、貧賤に於いては則

ち其の志を堅うす。」佐藤一斉言志四録より

富貴よりも貧しくて辛く厳しい環境の方が志を強固にするのである。
安っぽい教義・教養で自分の求める直感を失わないで欲しい。

どんなことがあっても己の生き方を失うなよ。
真っ白な生地のままに生きろよ。

たとえそれが儚い望みであろうと心の中は「素直」で純粋であれ。