つきあい
好きだからなるべく摩擦を起こさないように付き合いたい。
永く付き合いたいから問題は避けたい。嫌われたくないから相手の要求通りにする。
連絡等で不愉快な思いをさせたくない。暗い話題はさけて明るい話題しか伝えない。
自分が傷つくのがこわいから相手も傷つけない様にする。
だけど何故だか不安で喧嘩ばかりしてしまう。付き合いで思い悩む事は際限がないです。
しかし我慢する事は大事だけど主張しないのとは別問題です。
例えば、轆轤(ろくろ)の上の土の塊を見ているだけでは何も形が生まれてこない。
叩いたり押したり指を入れたりしなければ、思い通りの花瓶や茶碗やティーカップの形にならない。
好きだから撫ぜる様にしてばかりいると、その形は変わらずにいつまで経っても土の塊である。
壊れてもいいから失敗してもいいから、思い切って力を入れてみる事も大切です。
お互いに協力して形を作らなければ関係は脆くなります。
二人だけの形を作る努力をすれば、そこに愛と信頼と責任が生まれてきます。
互いに「突き愛」ながら、デコボコでも良いから、自分達の形を作らなければ、
信頼ある関係など手に入る事は出来ません。
不完全な男女が突き合うから付き合い(突き愛)は楽しいのです。
仲間同士の付き合いでも同じ様に、互いに認め合うところは認め、納得できないところは主張し合い、
意見を交えて話す事が大切です。
お互いに素直な自分「あるがまま」を許容する。
決して人格的に未熟な部分や欠点を笑ったりなじったりはしない。
相手の弱点を突いてはいけません。
互いに一致する前向きな部分だけに焦点を当てるべきです。
それぞれが違う環境で違う悩みを持っているものです。
自分にとっては大した問題でなくても、相手にとっては人生を揺るがす大きな問題になるかもしれません。
仲間同士の付き合いでは見て見ぬ振りをすることも大切なルールです。
荘子の言葉に「君子の交わりは淡きこと水の如し、小人の交わりは甘きこと醴の如し」というのがあります。
物事を分かった人(君子)は、人と交際するとき、水のようにさっぱりしているので、友情は永く変わることがない。
物事を分からない人(小人)の交際は、まるで甘酒のように甘くてべたべたした関係であり、
一時(いっとき)は濃密な関係にみえても長続きはせず破綻を招きやすい。
あるがままの自分をさらけ出せば良いのです。
「わからない」ことを「わかった」ふりをするから悩むのです。
「ない」ものを「ある」ように見せるから疲れるのです。
欠点があるから努力するのであって、欠点を補うから人としての魅力も増していくのです。
人柄は往々にしてその人の欠点から出てくる雰囲気ではないでしょうか。
欠点を補う努力、そしてそこを隠す行為が愛らしく見えることもあります。
仲間同士の付き合いは「突き合い」(突き愛)でこそ信頼関係が成立するのです。
しかし仕事での付き合いや目上の人の付き合いは、利害が係わる場合が多いのでとても難しいです。
自分に対する評価を意識して適当に話を合わせるのですが、本当に疲れてしまいます。
本音を言えば未熟と言われて、発言しなければ主張がないと笑われる。
自分の意見を言えば、3年早いと叱責される。
テーブルをひっくり返して帰りたくなります。
そこは我慢するしかないのです。世の中は本当に理不尽な事が多いのですから。
韓国の諺に「枝の多い木は少しの風にも揺れる」というのがあります。
他人の評価を意識していると、少しの言葉や出来事にも、心が揺れ動いてしまうという事です。
私は私ですという意識を持てば動じる事はないのです。
少し動じる部分の小枝を剪定して動じない心を養う事も大切です。
勝海舟の言葉に「行蔵は我に存ず、毀誉は他人の主張、我に与らず、我に関せず」というのがあります。
自分のやったことは自分がやったことである。
それをどのように思うかはその人の勝手であり、自分には関係ないことである。
正しく他人が自分をどのように評価しようが、認めようが関係ないことなのです。
しかし勝海舟ほどの人ならばそのような考え方も出来るのですが、
普通の人となるとそんなに簡単なものではありません。
そんな人には「付き合い」じゃなくて「触れ合い」を薦めます。
才能も能力も見た目もこの通りです。欠点もたくさんあります。
これが私です。こんな私でよければお付き合いください。
よろしく御願いします。
最低の礼儀があれば「触れ合い」も気楽なものです。
ちょっとした交流と割り切れば良いのです。
その中からほんとうの「付き合い」が生まれて来るかもしれません。
社会の顔と自分の顔二つの顔を持っても良いのではないでしょうか。
相手に合わせて出す部分を調整すれば良いのです。
評価を気にせず気楽に「あるがまま」でいきましょう。
作家の曽野綾子さんも言っています。「いい人やめると楽になります」。
私もある時にいい人やめたらとても楽になりました。
「付き合い」「触れ合い」ときには「歩み合い」が加われば「あい」が一杯で上手く行きます。