和にまつわる
和といえば先ず聖徳太子の十七条憲法を思い出します。
聖徳太子が十七条憲法の冒頭に掲げた「和をもって貴し(たっとし)となす」
という言葉は、元々「論語」が出典です。
孔子(孔先生)は紀元前5世紀頃の人物で儒教を確立しました。論語は、
孔子(孔先生)と弟子との対話形式の本で、中国と同じく、日本でも
任官試験として採用されていたので、多くの日本人はこれを学んでいました。
孔子の弟子の有若(ゆうじゃく)が、こう語っています。
「礼の用は和を貴しとなす。先生の道もこれを美となす。」
礼とは社会生活の規範ですが、それの実践にあたっては、和の心が根本に
なければならない。古代の聖王(真の王)の道が優れていたのも、
この和の心があったればこそだ、というのです。
しかし、有若は、「和」だけを最も大切なものとして、推奨している
わけではありません。彼はこうも語っています。
「しかし、どんな場合でも和の心さえあれば、十分だというわけではない。
いかにも和は大切だが、一方で礼による折り目が無いと、せっかくの和も
うまくゆかぬことがある。」
つまり、和だけが先行するのではなく、それと同時に社会生活の規範が
しっかりと確立されていなければならない、というのです。
この言葉を採用した憲法には、この考え方が根底にあったのです。
次に和といえば「平和」を思い浮かべます。
平和にはどの国も確固たる定義がありません。
果たして漢字で書く平らな和とはなんなのでしょうか?
「平和」という言葉はその語源は古くはなく、明治時代に英語の「PEACE」
という言葉の訳語として造語したらしい。
といっても、日本にそれと似た言葉があり、それはある説によると、
「和平」という言葉だったという。
この言葉の意味は「和(やわらげ)平(たいら)」にするというほどのものだが、
要するに言葉などで相手を説得し服従させるということ。
相手が屈服しなければ武器をもって征服するという意味も含められている。
奈良時代の言葉を集めた『時代別 国語辞典 上代編』(三省堂)で、
「和平」を調べてみると、どうやら「平」はまだなかったようで見当たらないが、
和は「やはす」という項目にある。意味は、「静め和らげる」とあるが、
もう一つとして、「討ち平らげる。平定する」とあるから、武器を放棄した
平和ではなく、武器によって戦争をし相手を倒すという意味を含んでいた
言葉であったことがわかる。
古代人にとって、「和平」とはそのような意味をもっていたのだが、
それは現在の国際政治にも通じる概念でもあるだろう。
そしてアイヌやアメリカンインディアンの会議を思い出します。
部族の長老を囲み円陣の中で対話が行われます。
テントの中で長老を中心に男たちが集まり酒かタバコを回し飲みして誓いを立てる。
それぞれの部族の責任者が問題を定義する。別の人間がそれに自分の考えを述べて
解決方法を考える。最後に長老が民族の歴史を語り決め事を語り
適切なアドバイスをして会の終わりを告げる。
全員の気持ちを一つにして参加者全員が共和の意識を統一させたのです。
そして今の時代に大切なのは「調和」である。
日本が最も得意なのが調和である。
家屋も生花もお茶も庭園も全てが調和で成り立っている。
自然を際立たせて陽の光と影を、家の中に取り入れる技は日本独特の世界である。
これからのデジタルの世界では人間の持つ感性の技を必要としなくなる。
あくまでも感性も技術の一つとして取り入れるだけになる。
しかしそこに人情の機微は映し出されないのである。
【「無為自然(むいしぜん)」と老子(ろうし)の関係と来歴】
「無為自然(むいしぜん)」は、禅宗における教えとして広まったものの、
その根底には古代中国の道教思想が影響を与えています。
老子(ろうし)は、道教の創始者とされる哲学者であり、『道徳経』という
著作が非常に有名です。
無為自然の考え方は、老子(ろうし)の『道徳経』において強調されている
「無為(無爲)」という概念に由来します。無為とは、無理に行為や介入をせず、
自然の流れに任せて物事を進めることを意味します。老子は、無為を
実践することで、人間社会も自然界と同様に調和し、円滑に機能すると
主張していました。
禅宗は、中国で成立した仏教の一派であり、老子の道教思想や無為の
考え方が取り入れられました。禅宗は、瞑想を通じて悟りを得ることを重視し、
心を無為自然な状態に戻すことを目指しています。そのため、「無為自然
(むいしぜん)」という言葉は、禅宗の教えと古代中国の道教思想が融合した
形で広まっていったと言えます。
皆様にとっての「和」はどのようなものでしょうか?
「和」の字の成り立ちは、粟の穂のまるくしなやかにたれるさまを描いた
象形文字。丸い穴とも縁が近く、角が立たない意を含みます。
皆様も和のこころを大切にしておだやかな人生をお送りください。