自分らしさ




学校や親から教えてもらうことは「常識と基本」です。
一生懸命覚えて社会へ出ていくと何かが違う事に戸惑います。
世の中では必ず他人と違う「貴方らしさ」を問われます。
今までは「常識と基本」だけで十分だったのにこれからの社会では通用しません。
それらは生成AIが担うのであまり役に立たなくなるという事です。

一般的に自分らしさとは個性です。個性とは幼児期から成長期にかけて培われるもの
です。その貴重な時期に画一化された教育を受けても個性は育ちません。
自分が好きなことや得意な事を教師や親に伝えても反対されます。
教師からはそんなことをしていたら試験に落ちてしまうぞ。
両親からは好きなことをやるのだったら協力しない。これは紛れもなくパワハラです。

一体全体「自分らしさ」とは何でしょうか?

デンマークでは早くから子供達に学びを選ぶ権利を与えます。
学校も教室も、家庭でも、授業のやり方も、自分で選ぶことができます。
青空教室でも近くの美術館でも博物館でも自宅でも構いません。
課外授業で海外へ一人旅に出ても一向にかまいません。
世界中の教育者や親たちが「そんな無茶な」と驚きます。
しかし教育水準が世界一なのにもっと驚きます。

デンマークの義務教育は、小学校と中学校にあたり、年齢にすると6、7歳から
16歳となります。ただ、ここでいう義務教育の意味は、学校へ行く義務ではなく、
教育を受ける義務。
そのため、基準を満たしていればホームスクーリングという形でも可能です。
実際は、8割程度の生徒が公立の小・中学校(フォルケスコーレ)へ通っています。
また、近年わずかながら増えているという私立学校に通う場合でも、
国から80%ほどの補助が出るため、教育費で諦めることはありません。

自身の望む教育を受ける権利がしっかりと保障されているのです。

フォルケスコーレでは「生徒が民主主義社会の一員としての役割を全うできるよう、
教育すること」を目的に据えています。
学年は0~9年生の10年制。0年生は学校への導入段階として設けられている
学年で、保育士の資格をもつペタゴーが担当します。従来は選択制でしたが、
2009年から義務教育に組み込まれました。9年生修了後には10年生があり、
希望すれば一年長く学習できます。また、到達度によっては、再度同じ学年で
学ぶこともあります。その判断は、本人と親と教師との話し合いで決定。

実際、クラスに年齢のちがう子がいるのはごく普通で、本人も負い目を感じる
ことはありません。

OECDの調査によると、GDPに占める教育への公的支出の割合は、

デンマークは6.3%、OECD諸国の平均は4.4%、日本はデンマークの半分程度の3.2%となっています。
(2014年公表)

教育への投資は将来への投資であることは、言うまでもありません。
教育は社会をつくる、といっても過言ではありません。
そして、私たちの教育の場は学校だけではありません。
探究型の学びです。自身の「なぜ」からはじまり、「知りたい」を求め、
「おもしろい」を感じる学び。自分発の学びが人生を彩る、と断言できます。

デンマークは日本と同じく天然資源に乏しい国で、人を育てることが国の成長に
欠かせないことを早くから認識し、投資をし、充実化を図ってきました。
教育はいつでも、どこでも、誰にでも開かれている。
人あっての国の姿勢が見て取れます。

日本の教育者や指導者は子供達をグライダーのように上に引っ張るのですが、
その後、卒業と同時に手を離して自力飛行を強制します。
その為に多くの若者が社会に出ると戸惑っているのです。
私はこれだけ出来るという自信が、いきなりその程度では使い物にならないと
宣告されます。
大人は自分達が通って来た指導法をそのまま当てはめようとします。
自分達も苦しんだのだからお前たちも同じ苦しみを味わえと言っているようなものです。

大学や自衛隊の体育会系にある暗黙の威圧意識です。
最近では宝塚歌劇団も同じような問題が指摘されました。

自分らしさとは何なのでしょうか?
それはわがままで、そのままで良いのです。
わがままは自分の主張です。これがやりたいのだという気持ちです。
そのままとは駄目だとか恥ずかしいとか嫌われるのではないかという気持ちが出ても、
そのままで良いのです。素直な気持ちこそが自分らしさなのです。

それが音楽に表れて自分なりの表現力が高まるのです。
それがデザインに表れて着る人の心をとらえるのです。
それが絵に現れて万人の心を癒してくれるのです。

この人を目指して頑張りなさいというアドバイスは、その人の真似をして
頑張りなさいという間違った言葉に聞こえてしまいます。
あらゆる技量は真似をしての表現だと自分ではなくなります。
技量に自分なりの味つけをすることが大切です。

私が以前紹介した韓国のピアニストがいます。
HJリム・ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ」を発表した女性です。
ベートーヴェンが力を入れたジャンルの一つがピアノ・ソナタです。

スター演奏家になるために必要なことは? 技術やセンスはもちろんだけど、
答えは「音楽コンクールでの優勝」。
ただ、審査員により「お決まりごとができているかな?」が審査されるコンクールでは、

真に個性的なスター演奏家が生まれにくいと言えなくもないのです。

パリで学ぶ韓国出身の若きピアニスト・HJリムは、熱い情熱で独自の表現を深化させ、
コンクールに関心を持たず。母国の両親に見せようとYou Tubeに上げた演奏会の
動画が大評判になった。なんとレコード会社から声が掛かり、24歳という若さながら
大作ベートーヴェンのピアノソナタ全曲でデビューした。
正にインターネット時代のシンデレラ・ストーリー!です。

日本では4つに分売され、最後の第4集(CD2枚組)がこちら。1枚目はゲーテの『ファウスト』から引用した

『永遠に女性的なもの – 成熟期』というテーマで24番、27番、30番、31番を収録。

理想の女性を求め続けたベートーヴェンの賛美や優しさが際立たされた恍惚とする演奏の収録盤です。

私の愛聴盤です。

如何でしょうか「自分らしさ」の教育と、ピアノで「自分らしさ」を表現したHJリム。
どちらも常識的にはあり得ないことです。
私の人生もあり得ないことの連続で「自分らしさ」を作りあげたのです。

もっとわがままで、そのままで自分らしさを表現してください。
昨日お会いしたピアニストへ贈ります。