羊の歌

「羊年」

羊が大きいから「美」しい。
羊に我があるから「義」理である。
羊に心があるから「恙」が無い。
羊に取れたての魚で新「鮮」なもの。
羊を食べて栄「養」とする。
羊が水辺で遊ぶと「洋」行になる。
羊が言葉をつたえて「詳」細になる。
羊が祈れば吉「祥」となり福をもたらす。

羊の漢字は百以上に及びます。

羊は財産としてとても貴重な動物なのです。
そして神のお供え物としても重要な役割があったのです。

その為に漢字の語源に多く使われたのだと思います。

中国には「貝の文化」と「羊の文化」というのがあります。

伝説の王朝「殷」は都市の遺跡が発掘されたことから実在したことが確認された。
東方系の農耕民族で高度な文明を誇っていた。「殷」は山西省・河南・河北省の辺りです。

農耕民族は大地の恵みを受ける自然環境に住んでいる為に多神教になりやすい。
彼等は目に見える財貨を重んじる民でした。

まだ金属貨幣が存在しなかった当時、貨幣として「子安貝」を使用していたのです。

そこから生まれた漢字が、

賽・財・貢・貨・貧・販・貴・賃・買・資・質・賞・賭などがあります。

殷の宗教は多神教で、神々は人間的だった。酒やごちそうなど、物資的な供え物を好んだ。
殷人は自分達の王朝を「商」と呼び、自分たちのことを「商人」と自称していた。

殷王朝が周によって滅ぼされると殷人は土地を奪われ流浪の民となったのです。
いわば古代中国版ユダヤ人となったのである。

いっぽう周人の先祖は、中国西北部の遊牧民族と縁が深く、
血も気質も、遊牧民的なところがあった。「周」は現在の陝西省・西安を取り巻く周辺です。

遊牧民は荒漠たる大草原や沙漠地帯を移動して暮らす為に一神教をもちやすい。

彼等は「天」を祀る儀礼として「羊」を犠牲にして供えたのです。

そこから生まれた漢字が、

義・美・善・祥・養・儀・羨・洋・佯・姜・羔・羞・躾などがあります。

殷の神々は、酒や肉のごちそうで機嫌をとり「買収」することができたが、
周の「天」は羊を捧げるだけでは不十分だった。

善行や儀礼など、無形の「よいこと」をともなわねば「天」は嘉納してくれなかったのです。

現代中国人は太古の二つの先祖から「ホンネ」としての貝文化と、
「タテマエ」としての羊文化の両方を受け継いでいるのです。「貝と羊の中国人」加藤徹より引用

その国その土地にまつわる歴史と文化を学ぶ事により、
民族の成り立ち、思考の原理、価値基準等が分かるのではないでしょうか。

2015年が皆様に取って吉祥の年になりますよう祈ります。