木のいのち
北側で育った木は柱になる
厳しい風を受けて寒さと日陰の中で育つから
芯があり輪が密集している
強い木なので建物の骨組みとなる部分で使用される
南側で育った木は板になる
光を受けて温かな風でのびのびと育つから
節が多く輪が幅広である
柔らかくて加工がしやすいので造作材に使われる
中腹以上やや峠で育った木は骨組みになる
光もあり風もあり嵐も経験するので
木質が強く梁や柱に向いている
谷間に育った木は
水分も多く養分も十分にあり
光も風もそれほど強くはないので
天井や化粧版に向いている
木は生育の方位のままに使え
「東西南北はその方位のままに、峠および中腹の木は構造材、谷の木は造作材」
山ごと買った木をどう生かすかということです。
その南に生えていた木は塔を建てるときに南側に使えというているんですな。
同じように北の木は北に、西の木は西に、東の木は東に、
育った木の方位のままに使えということですな。
このとおりに木を使うとどうなるかといいましたら、
南に育った木には枝がありますから、
たくさんの節ができますわ。
ですから南の柱には節の多いものが並ぶことになりますな。
山の中腹以上峠までの木は構造材に使えというのは、
ここらに育った木はたくさんの光を浴びて育っていますな。
日当たりはいいんですが、風も当たる。
嵐にもうたれる。
風にもたたかれる、中腹以上の木はこうした環境で育っているから木質が強く、
強い木は柱や桁、梁などの建物を支える
骨組みになる部分に使いなさいと教えているのです。
谷は水分も多く養分も十分にありますわ。
こうしたところでは光も風もそんなに強くにありませんから、
長押や天井、化粧版なぞの造作材に使えというんですな。
西岡常一「木のいのち木のこころ」より
「人も育った環境で木のようにそのまま使えという事です」