願いと祈り(事業編)




新しい事業を始める時大切なことがあります。
基本的には5つの決めごとです。

①目的を明確にする。
②時間計画をする。
③世の中の為になるか。
④後続にバトンを渡せるか。
⑤自己満足が得られるか。

①目的を明確にする。
市場規模、競合他社、独自性をスタッフと話し合う。
組織が小さくても「M・V・V」を作ることが大切である。

②時間計画をする。
1年後、3年後、5年後の状態を書き出す。
ゴールが分かれば進みやすくなる。

③世の中の為になるか。
「三方良し」の定義に合うか?
自社もお客様も地域も良くなるか検討する。

④後続にバトンを渡せるか。
ビジネスモデルとして確立して誰でも使えるようにする。
ビジネス先願権や使用権で縛る必要はない。

⑤自己満足が得られるか。
それぞれの承認欲求と自己実現が両立するするのか。
基本は「利他心」の気持ちを持ち続けることが出来るかが大切です。

中小企業の中には事業計画も無いところが多々あります。
今の状況で頑張っていればいつかは利益が出ると信じているからです。
絶対に「信じること」と「目標達成の願い」ははっきりと区分けすべきです。

中国の諺に「計画なくして成功なし。水槽より大きく魚はなれない。」
事業計画は水槽です。そこで働く従業員が魚です。
従業員を大きくするのも小さいままにするのも事業計画ですよ。

ビジネスを1枚の紙で表現する時に、この4つの枠組みに落とし込むことが重要です。
Rリソース(自社の持っている魅力は何か)
Sスポンサー(応援者は誰か)
CRSカスタマーリ・レーション・シップ(お客様とのリレーションをどう取るか)
Vバリュー(社会的に有意義な事か)

その事業計画を会社としてのスローガンとして壁に貼りだすのです。
仕事はすべて「S・S・L」スピード・シンプル・ロジカルで組み立てるのです。
スピードを持って取り組む。シンプルに考える。論理的に説明する。
小さな会社だからこそスローガンが活きて来るのです。

個人的な願いは当然、叶えることが目的にあるのですから、そこに向かって進んで
ゆくことになりますが、その願いが一旦成就されると、その歩みはそこで止まって
しまいます。
目的地を設定している以上は、目的地に到達してしまうと、
当然、その旅路はそこで終わりとなります。
 
禅門にこのようなことが書かれています。願いがあったということは、
もともとそこには何かしらの理由や思いというものがあったはずです。
しかし、目的地に到達することしか意識しないようになると、目的地に到達した瞬間、
その出発点や道中にあったものは、どうしても忘れ去られてしまいます。 
無心の願いとは、それを嫌っているのです。
ゆえに禅では目的地を設定しません。目的地に到達することよりも、
その歩みそのものが重要なのであって、且つ願いとその道程は
不可分であるというのです。

山登りをして頂上に到達したとしても、その道中がなかったことにはなりませんし、
帰りの下山がないことにはなりません。 
無心の願いは、たとえ願いが成就してもその歩みを止めることはありません。
成就してなお、その願いは自分の中に生き続けます。
願いの叶う叶わないを超越するとは、その成就に固執してしまい、
人生の本質を見失ってしまうことを忌避することを意味しています。
これを鈴木大拙は「成就することのない永遠の願い」と言うのです。 

私たちの人生を鑑みてみると、子供から大人になる過程で、高校受験や
大学受験を目標に勉強することもあるでしょう。では、晴れて受験に合格して
入学できたらそれで終わりかというと、もちろん違います。
入学のあとの卒業や就職が最終目標かというと、これももちろん違います。 

人生とは、終わりのない道のりです。限定的な目的や低い目標は自分の限界を
決めてしまいます。自分の限界を決めるとそこで成長は止まってしまいます。 
鈴木大拙は続けます。
どうしても手の届かぬところのあるものが「祈り」なのです。

(中略)いくらやっても駄目だから、よそうというような祈りでは、
限りある世界でこそ意味あるかもしれぬが、駄目なものをくり返し、
くり返しやる心、その心は実に、弥陀の本願の世界に生きているものでないとわからぬ。
(鈴木大拙『無心ということ』)

ここでは、阿弥陀如来の本願になぞらえて、その「祈り」の世界を説明しています。
「祈り」の世界とは、他でもない私たちが住むこの世界のことです。
永遠の願いを持つことができたのなら、この世界はそのままで極楽浄土となるのです。
この極楽浄土とは人の生き方そのものを表しています。 

終わりのない願いこそが本当の「願い」。マグロやカツオは常に泳いでいないと、
酸欠によって死んでしまいます。馬は常に走っていないと、血流が止まって
死んでしまいます。私たちの人生における願いというものも、
それと同じなのかもしれません

ビジネスは「願いと祈り」だけでは成立しません。
しかし、多くの困難な中で「願いと祈り」があるから救われるのです。
しっかりとした事業計画があるからこそ、常に願いを取り込んで、
働く人たちと気持ちを一つにして前に進んで行くのです。

ふと時間のある時に「自分の願い」は何だろうかと考えるのも大切ですよ。
人生が見えやすくなります。